<金口木舌>まさかと思った。取材を終え、引き揚げようとした時、突然、聞き・・・


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 まさかと思った。取材を終え、引き揚げようとした時、突然、聞き慣れた爆音が耳をついた。米軍垂直離着陸輸送機オスプレイだ

▼時間は午後10時半前。騒音防止協定に違反している。8日、翁長雄志知事の遺体を乗せた車が、病院から離れた直後だった。「きょう、この時も飛ぶのか」。怒りを感じた県民も多かったに違いない
▼米軍普天間基地所属の大型輸送ヘリコプターが沖縄国際大学に墜落、炎上し、13日で14年になる。米軍側が日本側の捜査を排除し、その後、日米が合意した米軍機事故のガイドラインは、沖国大での米軍対応が標準化された
▼抗議を重ねても繰り返される米軍による事件や事故。市街地上空飛行など取り決めが破られたことも数限りない。翁長知事は日本政府も「当事者能力がない」と批判した
▼知事の死去は、日本が抱える不条理をいくつも浮き彫りにした。全国紙の多くは急逝を1面で報じた。だが、テレビがより多く時間を割いたのは、日本ボクシング連盟会長をめぐる疑惑だ。ネット上では知事が沖縄全戦没者追悼式に出席した時と同様、心ないコメントも発信された
▼悲観したくもなるが、事態打開には声を上げ続けるしかない。11日は悪天候にもかかわらず、新基地建設断念を求める県民大会に7万人(主催者発表)が参加した。沖縄から日本を変えることができる、と希望を感じた一日だった。