<金口木舌>爆竹と沖縄振興


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 衆院本会議場に破裂音が響く。青白い煙が上がり、たくさんのビラが舞う。傍聴席の女性が「沖縄返還協定粉砕」と叫んだ。沖縄の復帰を前にした1971年10月19日に起きた「国会爆竹事件」だ

▼沖縄返還協定の批准が焦点となった「沖縄国会」。爆竹が鳴らされたのは佐藤栄作首相(当時)が「沖縄問題は好ましい解決を見た」と演説した後だ。協定は約1カ月後に強行採決される
▼逮捕された県出身者3人が所属していた沖縄青年同盟は会見で、沖縄返還協定を「第三の琉球処分だ。本土は沖縄に一貫して義務は与えるが、権利は奪うということだ」と批判した
▼議論の場である国会で爆竹を鳴らす行為は許されない。しかし米軍基地を残したままの復帰に異議を申し立てた青年たちの主張は、現在の不合理にも通じる
▼安倍政権には沖縄振興と基地問題のリンクを公然と主張する閣僚もいる。国からの財政移転は他県では省庁ごとに計上されるが、沖縄は内閣府が一括計上するため総額が明示される。他県に比べ、決して突出していないにもかかわらず「厚遇」との誤解が独り歩きする
▼一括計上方式には各省庁と折衝する手間が省ける利点もある。だからといって内閣府の顔色をうかがう構造が続くのが好ましいことなのか。各県の予算が全てこの方式なら、沖縄が厚遇されているかどうかは一目瞭然だろう。