<金口木舌>ボク死ニタクナカッタ


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 中里友豪さんの「ボク零歳・黒焦げんぼ」という詩がある。〈ボク零歳黒焦ゲンボ/ボク死ニタクナカッタ/「生」ノ意味モ知ラナカッタ〉と始まる。1962年12月20日、嘉手納町の住宅街に米軍の大型輸送機が墜落し、住民2人が亡くなった事故が題材だ

▼亡くなったのは24歳の男性と生後2カ月の男の子だった。詩は〈ボク母チャンノオ乳呑(の)ンデイマシタ/イイ気持チデ呑ンデイマシタ/トツゼン/オ乳ノカワリニガソリンが流レコンデキテ/オナカノホウカラ焼ケテシマイマシタ〉とつづられる
▼翌日の琉球新報には事故を報じる記事に関連して「基地沖縄の悲劇だ」という見出しがある。事故の3年前にあった宮森小学校ジェット機墜落事故、1年前の川崎ジェット機墜落事故の被害者の怒りと悲しみを伝えている
▼今年11月に南大東島沖で米軍のFA18戦闘攻撃機が墜落し、米軍機の墜落事故は復帰後だけで50件となった。遺族や被害者の「悲劇を繰り返すな」「基地をなくして」という願いは、紙面で何度も伝えてきた
▼冒頭の詩で赤ん坊は問い掛ける。〈残ルノハ何デスカ/日常ダケデスカ/生活化サレタ恐怖ダケデスカ/オナカハ痛ミマセンカ〉
▼遺族の願いは聞き入れられないまま、在日米軍専用施設面積の7割が沖縄に集中し、米軍機は今も頭上を飛んでいる。日本国民の心は痛まないのだろうか。