<社説>不服審査請求 政府は民主主義に立ち返れ


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 辺野古新基地を拒否する沖縄の民意を政府はいつまで無視し続けるつもりなのか。今求められるのは行政の継続性よりも、民意に反した施策は許されぬという民主主義の基本に立ち返ることだ。

 翁長雄志知事による辺野古埋め立て承認の取り消しに対し、沖縄防衛局は行政不服審査法に基づく審査請求と執行停止を国土交通相に申し立てた。
 菅義偉官房長官は14日午前の会見で「防衛省で承認取り消し理由を精査した結果、瑕疵(かし)はない」と申し立て理由を説明した。13日の会見では「行政の継続性という観点から埋め立てを進めるのは当然のこと」とも述べた。
 このような政府の姿勢は民主的手続きに反するものだ。翁長県政発足と承認取り消しに至る過程を見れば、政府の主張は全く理にかなわないのは明らかだ。
 翁長知事は、埋め立て承認の妥当性を検討した第三者委員会の報告を踏まえ、公有水面埋立法に照らして前知事の埋め立て承認には法的瑕疵があると判断した。ここに至るまで、県は行政的な理由を積み上げたのである。
 「法的瑕疵がない」という政府の抗弁は、環境保全や基地重圧からの脱却という県民益を踏まえた行政判断を否定するものだ。地方自治の理念をも逸脱している。
 「行政の継続性」も納得できない。昨年の県知事選で、県民は埋め立てを承認した前知事の公約違反を批判し、新基地阻止という民意の実現のため翁長県政の誕生を選択したのだ。政府はこの事実から目を背けてはならない。県民の選択を尊重すべきだ。
 国交相が承認取り消しの執行停止を判断した場合、県と政府は法廷闘争に入ることが予想される。法廷では承認取り消しの法的有効性が争われることになる。
 日弁連は「(承認取り消しは)法的に許容されるものだ」とする会長声明を発表し、知事判断を支持した。前知事の承認は「法律的な瑕疵が存在し、瑕疵の程度も重大」というのが、その理由だ。法的見地を踏まえた日弁連の声明に敬意を表したい。
 政府は県を批判する際、法治国家という言葉を用いてきたが、法的瑕疵が指摘された埋め立て承認に固執し続けること自体、法治国家を否定するものだ。政府はそのような愚行をやめ、新基地建設を直ちに断念すべきだ。それが民主国家のあるべき姿である。