米軍が2017年から東京の横田基地に配備する空軍仕様の垂直離着陸輸送機CV22オスプレイについて、政府は同機が沖縄で訓練することを公式に認めた。基地負担軽減に明らかに逆行する。
オスプレイをめぐっては、県や市町村、県内各団体がこぞって普天間飛行場に配備された海兵隊のMV22の撤去を求めてきた。
そうした中で一方的に「CV22も沖縄で訓練する」と通知するやり方はあまりに不誠実だ。辺野古の問題にも通底する非民主的で傲慢(ごうまん)な安倍政権の姿勢を感じずにはいられない。
通知は、翁長雄志知事の辺野古埋め立て承認取り消しの翌日だった。政府が繰り返す「沖縄に寄り添う」姿勢とは正反対の冷徹さを感じた県民も少なくあるまい。
CV22についてこれまで政府は「日米同盟の抑止力と対処力の向上、アジア太平洋地域の安定に資する」(中谷元・防衛相)と説明してきたが、CV22は特殊作戦部隊の長距離輸送が主な任務だ。
中谷氏らは「沖縄への飛来も考えられるが、具体的な説明を受けていない」と明言を避けてきたが、米軍の沖縄での運用は既定方針とみられていた。CV22を利用する空軍特殊作戦群が嘉手納基地を拠点とし、それと行動を共にする陸軍特殊作戦部隊が読谷村のトリイ通信施設に駐留するからだ。
特殊作戦を担うCV22は夜間や超低空飛行など危険な訓練をする。看過できないことであり、県民生活への影響が強く懸念される。
日米両政府がCV22の配備先を当初有力視された嘉手納ではなく横田に決定した際、沖縄の負担軽減を演出する狙いがあるとも伝えられたが、全く逆だ。MV22や他の部隊が残った上、横田のオスプレイも新たに訓練に来ることはどう考えても負担増でしかない。
防衛省によると最も被害が深刻な「クラスA」事故の発生率でCV22はMV22の3倍を超える。政府はMV22配備の際、CV22に比べた事故率の低さを説明材料にしていた。この矛盾をまずきちんと説明すべきだ。
そもそも嘉手納の特殊作戦群は火山の噴火でフィリピンから暫定移転した部隊が残ったものだ。トリイの部隊について米シンクタンクは陸軍キャンプ座間(神奈川)への統合を提言している。負担軽減に取り組むなら、沖縄の部隊を県外に移転し、CV22の沖縄訓練計画を撤回すべきだ。