<社説>辺野古・国委員重複 建設計画の撤回しかない


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 「環境専門家」の権威はもはや地に落ちた。辺野古の環境保全など望むべくもないのは明らかだ。

 米軍普天間飛行場の代替となる名護市辺野古の新基地建設事業で、環境保全措置を客観的に指導・助言するために沖縄防衛局が設置した「環境監視等委員会」委員13人のうち7人が2012年の環境影響評価(アセスメント)の評価書補正に関する防衛省の有識者研究会の委員を務めていた。
 環境アセス段階では保全措置などについて提言し、その後は自らの提言措置などに「指導・助言」する立場に回っていたことになる。防衛省は「委員会は公平中立の立場から議論が行われている」と説明するが、まるで説得力がない。
 7人のうち荒井修亮京都大教授と原武史全国水産技術者協会理事長の2委員は、新基地建設事業を多数受注する建設環境コンサルタント会社「いであ」(東京都)との共同研究で天然記念物ジュゴンの保全システムを開発していた。
 その共同研究を基に辺野古沖のジュゴン保全措置が作成され、環境監視委で審議されたが、異論は出なかったという。これで保全策はお墨付きを得たことになるのか。甚だ疑問だ。
 荒井委員には「いであ」から800万円の寄付があり、原委員には同社関連法人から年間200万円超の報酬が支払われていた。
 環境監視委の7人がアセスの研究会と同じ人物であることに防衛省は「専門分野などを勘案し、建設事業の環境保全措置に知見を有するアセス研究会委員に引き続き携わってもらった」と説明した。
 受注業者からの金銭支援などの事実と併せて、この説明に納得のいく人はどれほどいるだろうか。これで審議の客観性や中立性が疑われない方がおかしい。
 この問題をめぐっては、沖縄防衛局がジュゴン保全の業務を、環境監視委の運営業務と一くくりにして発注し、これを「いであ」が受注していたことも発覚した。同社には防衛省OBが天下っていることも分かっている。何をか言わんやだ。辺野古の環境保全をだしにした利権の構図が浮かび上がる。
 環境監視委は前知事による埋め立て承認の際に条件とされ、昨年4月に発足したものだ。環境保全手続きのいい加減さが明らかになった以上、政府は新基地建設の計画自体を撤回することが筋である。