ヒナが落ちてきた!→ 「置いておくしかない…」悩んだ末にとった行動、SNSで称賛の声


ヒナが落ちてきた!→ 「置いておくしかない…」悩んだ末にとった行動、SNSで称賛の声 地面に落ちてきたという巣立ち前とみられるヒナ=5月12日、沖縄本島南部(体操部のお姉さん提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 大城 周子

 地面に落ちてきた野鳥のヒナを“避難”させたー。そんな何気ない投稿がSNSで話題になっている。投稿翌日の13日午後には閲覧数が50万回を超え、5600件以上の「いいね」が寄せられている。

「散歩の途中、巣立ち前っぽい雛ちゃんが目の前に落ちてきた。まだ頭にポヤポヤした羽毛がついてる。車の往来があるので、ひとまず道路から移動させたけど『落ちてきた雛には何もしちゃダメ』と夫に言われ、ものすごく後ろ髪引かれる思いでその場を後にした。がんばれ雛ちゃん、幸運を祈る」

 話題の投稿主は沖縄県の本島南部に暮らす「体操部のお姉さん」(@taisoubu_onesan)だ。12日午前10時前、住宅街を夫と散歩していたところ、バタバタバタッと大きな音とともに目の前に何かが落ちてきたという。近づいて見てみると、1羽のシジュウカラのヒナが地面で羽をバタバタと動かしていた。

辺りを見回している様子のヒナ(体操部のお姉さん提供)

 出血やけがはなさそうだったが、そこは幹線道路の抜け道にもなっていて車の往来がある場所。体操部のお姉さんはひとまず両手に収まるほどのヒナをそっと捕まえたところ、おとなしく指に止まった。周辺の街路樹や庭木を見回し、巣を探してみたが見つからず。近くのガジュマルの枝に乗せてみても、うまく飛べず駐車場の車にぶつかる始末。

 「どうしよう…家に連れて帰ろうか」。悩むお姉さんに向かって夫は「その辺に置いておくしかない」とぴしゃり。冷たい対応に思えるかもしれないが、「ヒナは拾わない」は鉄則だ。新聞社のカメラマンをしている夫は愛鳥家で、以前に赤ちゃんコウモリの救出劇に関わったときの県職員の助言を覚えていたという。

【動画】赤ちゃんコウモリ、落ちた先はバイクの隙間…那覇の中心街で救出劇

 ヒナを木の下に移動させて帰宅後、「かわいかったなあ」と軽い気持ちでXに投稿したお姉さん。あっという間に反響が広がり、その行動を称賛する声が続々と書き込まれた。5月10~16日の「愛鳥週間」まっただ中というタイミングの良さも拡散につながった。

「こういうGOOD対応こそバズってほしいというか、共感されてほしい」

「これぞ本当の愛鳥週間、って感じだな」

「これが!野生動物との!正しい距離感です!」

「安直な『かわいそうな鳥ちゃんを救出しました!』的なポストより、こういった行為こそ拡散されるべき」

「正しい対応。感情に流されなかった体操部のお姉さんとてもえらい」

胸に黒いネクタイのような模様が特徴のシジュウカラ。デイゴとのコントラストが美しい成鳥=2023年4月、那覇市内(ジャン松元撮影)

 沖縄県の環境部自然保護課も「ヒナを拾わないで」と呼びかけていて、鳥獣保護法でも野鳥を許可なく捕まえたり飼ったりすることは禁止されている。

 野鳥の子育てシーズンの4~7月にかけて、飛ぶ力が不十分なヒナが地面にいるのはよく見られる光景で、関係団体への問い合わせも増えるという。地面に落ちた“迷子”のように見えてもほとんどの場合、保護する必要のない元気なヒナだ。親鳥は、餌を探すために一時的に姿が見えなくても必ず戻ってくるが、人が近くにいるとかえってヒナに近寄れなくなってしまう。

 沖縄野鳥の会の山城正邦会長は「親鳥はどこかで見ていることがほとんどで、ヒナを探すのを諦めない。保護したいというのは人間的な考えで、親鳥からすれば誘拐にあたる」と指摘する。そして「巣があれば戻してあげるのが先決だが、基本は見守るのが第一。もし危険が迫っているなら安全な場所に移すことを考えて」と助言する。

青虫をくわえ、ヒナの待つシーサーへ帰るシジュウカラの親鳥=1998年4月、浦添市内

 例えばカラスやネコなどに襲われそうだったり、車が頻繁に通ったりする場所なら近くの茂みや植え込み、木の枝先など安全な場所に移すといい。けがや出血をしているケースや希少種などそのままにしておけないと判断した場合は、自治体の鳥獣保護を担当する機関(沖縄だと県の環境部自然保護課や環境省沖縄奄美自然環境事務所、漫湖水鳥・湿地センター、各市町村の担当課など)へ相談して判断を仰ぐようにする。

 県の自然保護課ではホームページで、傷ついた野生鳥獣を見つけた際の対応や「野生動物ドクター」の案内なども掲載している。

 最後に、“身バレ”になってしまうが、実は体操部のお姉さんは沖縄の新聞社「琉球新報」の社員だ。しかも投稿がバズったのはこれが2度目…。

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 今回の反響の大きさを受け、お姉さんは「きっと愛鳥家の人たちはこれまで、もどかしい思いをしていたんだろうと感じた。『愛鳥週間』に関連した記事は子育てなどほっこりした話題が多いが、そこに注意点を並記するなど報道機関として意識するべきことも考えさせられました」と語った。