<社説>県の不服申し出 政府の矛盾こそ審査せよ


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 米軍普天間飛行場移設に伴う辺野古新基地建設で、知事の埋め立て承認取り消しに対する国土交通相の執行停止を不服として、県が国地方係争処理委員会に審査を申し出た。これは、日本が公正な国であるかが問われる局面である。

 なぜこれが公正な国か否かの指標になるかと言えば、国家の不公正性を疑わせることがあったからだ。言うまでもなく国の執行停止決定のことだ。
 翁長雄志知事の承認取り消しに対し、沖縄防衛局は行政不服審査法に基づき国交省に執行停止を申し立て、石井啓一国交相は執行停止を決定した。申し立てた防衛省も受け取った国交省も同じ政府だ。右手で出した書類を左手で受け取るようなものである。まさに茶番劇だ。どこに公正性があろう。
 国内の行政法研究者93人は共同で「行政機関が審査請求することを行政不服審査法は予定していない」とし、執行停止は不適法との声明を出した。防衛局の申請を「私人になりすまし」と批判し、「法治国家にもとる」とまで断じている。法の専門家がここまで言い切るのだ、不公正性は歴然としている。
 係争処理委は第三者機関だ。やっと公正な判定の場に移ったと言える。だが地方自治法は「裁決」や「決定その他の行為」は同委員会の対象外と定める。だから門前払いとなる恐れもある。
 そうなれば、政府による決定の適法性を国と地方が争った場合、第三者機関が判断する機会を逸することになる。だから「国としての公正性が問われる」のである。
 その入り口論より、むしろ「私人になりすまし」の適格性こそ、厳格に審議すべきであろう。
 それにしても政府の理屈は奇怪だ。現在の普天間飛行場の危険性除去は「緊急性」が高いから、数年かかる移設作業を止めてはならず、取り消しを執行停止するというのである。そこまで言うなら、普天間の「5年内運用停止」をなぜまだ米国に要求しないのか。オスプレイの飛行ルール逸脱も、深夜・未明のヘリ飛行も改善を求めないのはなぜか。支離滅裂も甚だしい。委員会はこの矛盾こそ審査すべきだ。
 翁長知事は会見であらためて「(新基地建設を)あらゆる手段で阻止する」と述べた。今後いくつもの法廷闘争に入るだろう。知事一人の思いではなく、民意が不退転だからである。この民意の重みを政府はやがて思い知るはずだ。
英文へ→Editorial: Now that Governor Onaga has filed an objection, the central government’s inconsistencies must be scrutinized