<社説>係争処理委 辺野古手続きの厳正審査を


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 総務省の第三者機関である国地方係争処理委員会が、県の辺野古埋め立て承認取り消しの効力を停止した石井啓一国土交通相の決定の適否を審査する初会合を開いた。議論を尽くしてもらいたい。

 県が国交相の決定は違法として審査を申し出ていた。会合では来週にも翁長雄志知事と石井国交相の主張をそれぞれ文書で聴取することを決めた。
 委員長の小早川光郎成蹊大法科大学院客員教授によると、会合ではさまざまな意見があったというが、経緯から見て国交相による執行停止の違法性は明らかだ。
 知事の承認取り消しに対し、沖縄防衛局は行政不服審査法に基づき執行停止や審査請求を申し立てた。申立人も審査側も同じ国の機関で、公平な判断など望めない。
 同法は行政の不利益処分に対して私人が不服を申し立てる制度を定めたものだ。行政法研究者グループは防衛局の申し立てを「私人へのなりすまし」と痛烈に批判し、却下を求める異例の声明を出した。執行停止決定の違法性は疑う余地はないのではないか。
 新基地問題で安倍政権の横暴性は露骨になっている。県は国と今後裁判に入ることを想定し、海上作業中断を求めていたが、それを無視して海底ボーリング調査も4カ月ぶりに再開した。
 だがほころびも目立つ。国交相は行政不服審査法手続きで10月27日、知事の承認取り消しの効力を停止させたが、同じ日には地方自治法に基づき「知事の取り消し処分を取り消す」ための是正勧告を出している。
 こうした矛盾に対する県の質問状に対し、国交省は「執行停止は行政不服審査法で、代執行は地方自治法でそれぞれ認められている」と木で鼻をくくったような回答をした。「法治国家」(菅義偉官房長官)が聞いてあきれる。
 係争処理委は次回会合で県の申し出が審査対象になるかを議論する。地方自治法では審査請求に対する裁決などは審査の対象外としている。だが行政法学者からは、執行停止の違法性などから見て対象外のケースには当たらないとの指摘がある。
 係争処理委は国と地方を対等な関係に転換した地方自治法改正に伴い、国による地方自治の侵害を防ぐ目的で設置された。地方自治を壊しかねない新基地建設問題に対し、厳正な審査が求められるのは設置の趣旨からも当然である。