<社説>日本版CIA 看過できない暴走の危険

 自民党のインテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチーム(PT)が、米中央情報局(CIA)を参考にした対外情報機関の新設を政府に提言するという。

 諜報(ちょうほう)活動の強化が人権侵害と紙一重であるのは戦前の例からも明らかだ。容認できない。
 構想はシリア日本人殺害事件を機に浮上した。邦人保護に向け海外情報収集を強化するというのが名目だ。来年の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)や2020年の東京五輪の国内テロ対策も念頭にあるとされる。
 だが、それだけではないのではないか。実際には安保法制で道を開いた自衛隊の海外活動への支援の要素が大きいだろう。
 対外情報機関は外交・安全保障関係者からつとに求められていた。現在は警察庁、公安調査庁、防衛省、外務省、内閣情報調査室に情報収集機能があり、計約4400人が携わっているとされる。
 各国の対外情報機関は緊密に情報交換しているが、同等の組織であることが前提だ。CIAのような組織でないと真の意味での情報交換はなされないという不満が強かったのである。
 しかし海外での諜報活動の結果がどうであったか、歴史に学ぶ必要がある。中国大陸侵略に役立てられた戦前の南満州鉄道調査部が想起される。海外での諜報活動が、現地での人権侵害と裏表の関係にあったことを銘記したい。
 ただ、対外的な活動だけが問題なのではない。むしろ国内での諜報活動こそ警戒したい。戦前、思想犯取り締まりを担った特別高等警察(特高)が何をしたか、あらためて思い起こすべきだ。
 諜報活動には本質的に非民主的要素がある。諜報で得られた情報は必然的に一部官僚・政治家が独占し、国民には知らされない。民主的統制と相反するのだ。
 この点についてPTは、対外情報機関に対する監視機能の強化も図ると強調する。衆参両院の「情報監視審査会」の権限を拡大する構えだ。
 だが特定秘密保護法は国会議員ですら一部にしか情報を開示しないことになっている。しかも政府の判断次第ではその一部議員にすら開示しないのである。民主的統制が機能しない仕組みなのだ。
 情報を独占する諜報機関が暴走しがちなのは歴史の教訓である。まして民主的統制が機能しない中での設立は、到底看過できない。