<社説>北朝鮮「ミサイル」 包囲網狭め軟化引き出せ


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 北朝鮮が「地球観測衛星」打ち上げと称した、事実上の長距離弾道ミサイル発射を強行した。

 東アジアの安全保障環境を直撃し、国際秩序に揺さぶりをかける「瀬戸際外交」の極みである。
 弾道ミサイル技術の使用を禁じた2009年の国連安全保障理事会の決議に明確に反する。国際社会を挙げた発射回避要請を無視した暴挙と非難せざるを得ない。
 だが、「外交解決は困難」との見方が国際社会に広がり始めたことは危険だ。あくまで包囲網を狭める外交努力によって、北朝鮮の軟化を引き出し、核とミサイル開発を止める方策を探らねばならない。
 「水爆実験」と称する核実験から1カ月。追加制裁決議案が安保理でまとまらない中での発射は、北朝鮮の暴走を抑え込めない国際社会の非力を示した。緊急開催される国連安保理は実効性が高い対応策を早急に打ち出してほしい。
 韓国軍は「ミサイル」の射程が5500キロ~1万3千キロの大陸間弾道ミサイル(ICBM)級と推定した。軍事的緊張を一層高める危険な領域に近づいている。
 北朝鮮は核とミサイル開発を急ぎ、脅威を印象付けようと焦っている。軍事大国・米国に対抗する「抑止力」を高めて、金正恩体制の存続を図るためである。
 北朝鮮が孤立から脱し、疲弊する経済を立て直すには国際協調以外の道はない。それを自覚させる上で、米国と中国の役割は大きい。
 核開発疑惑をめぐり、イランが核開発を大幅に制限する作業を履行し、米欧は対イラン制裁を解除した。軍事衝突さえ危ぶまれた懸案の外交解決の先例となろう。
 米国は友好国である中国に圧力を強めるよう求め続けながら、北朝鮮との対話を閉ざし、暴走の一因になっている。米国は直接対話の方策を探らねばならない。制裁強化一辺倒に映る日本も米国に対話を促すべきではないか。
 中国は金融制裁や石油禁輸など、経済封鎖的な対応には消極的である。早期に解決するため、北朝鮮への影響力を最大限に発揮すべきだ。
 「ミサイル」が上空を通過した県内に被害はなかったが、モノレールが止まるなど県民生活に影響が出た。迷惑千万である。今回の発射を機に、北朝鮮の核を抑止する上でほとんど機能しない在沖米軍基地の必要性が、ことさら強調されることがあってはならない。