<社説>被爆体験者判決 早急に認定見直し議論を

 被爆地域の線引きを固守してきた国の援護施策の在り方が一層問われることになろう。

 国が指定した地域の外で原爆に遭った長崎の「被爆体験者」が被爆者と同等の援護を求めた訴訟で、長崎地裁は、被ばく線量が高いと推定される地区にいた10人に被爆者健康手帳を交付するよう長崎県と長崎市に命じた。
 被爆体験者を被爆者と認める司法判断は長崎、広島を通じて初めてだ。一部だが、国が定める地域外で手帳交付を命じた点で意義があろう。
 国は旧長崎市を中心に、爆心地から南北に約12キロ圏、東西に約7キロ圏を「被爆地域」と定めている。地域内で原爆に遭った人などは「被爆者」と認められ、医療費の自己負担分は原則無料となる。
 だが爆心地の半径12キロ圏内で原爆に遭っても、被爆地域の外側にいた人は「被爆体験者」となる。慢性肝炎などを患っていても、被爆体験に起因する精神疾患がなければ医療費は支給されない。どう考えても理不尽ではないか。
 原爆投下後に灰をかぶった野菜を食べざるを得ず内部被ばくし、病気になった。法廷で原告らはこう訴えた。街が灰じんに帰し、大混乱する中、原爆や放射性物質の何たるかなど知る由もあるまい。国が定める地域の内か外にいたかで援護に大きな差が生じている実態は改めるべきだ。
 先行する同種の訴訟では、2012年の長崎地裁判決が原告側の請求を全て退けた。今回は一部地域の住民の被爆を認めた点では前進だが、被爆者認定のハードルは依然として高い。原爆による健康被害を受けた可能性の証明を原告側に求めている点も12年判決と変わらない。高齢の原告らには厳し過ぎる内容だ。
 今回は「原爆投下による年間の放射線被ばく線量が自然界の約10倍(25ミリシーベルト)を超える場合は健康被害の可能性がある」と独自基準を示し、原告の一部を救済した。だが原告側が強く訴えた内部被ばくについては「内部被ばくのみで健康被害が生じたとまでは認められない」と退けた。原告側は25ミリシーベルトも根拠が不明確だと反発している。
 判決について国は、県や市などと対応を協議するとしているが、高齢化が進む被爆体験者の救済を最優先に考えるべきだ。地域指定見直しや内部被ばくに関する議論も早急に進めてもらいたい。



琉球新報