<社説>貧困損失沖縄1位 正確に実態把握し対策急げ


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 貧困家庭の子どもの支援をせずに格差を放置した場合、社会が被る損失を都道府県別に見ると、沖縄県は490億円の損失となり、生産額に占める割合では1・29%で、全国で最も損失の影響が大きくなることが日本財団の調査で判明した。県内の貧困状況が全国的に見ても深刻であることがあらためて浮き彫りになった。対策を急ぐ必要がある。

 推計は貧困対策が必要な子どもの高校進学率や中退率を全国平均並みに改善させるなどの支援をした場合と、しなかった場合を比較し、64歳までに得られる所得の差を推計している。
 貧困世帯の子どもは医療、食事、学習、進学など、さまざな面で不利益を被る状況に置かれる。将来にわたって貧困から脱け出すことが難しくなり、世代を超えた貧困の連鎖が生まれてしまう。
 貧困を放置すれば学歴などの違いで賃金水準に格差が生まれ、貧困家庭の子どもの就業後の賃金が低くなり、社会全体の所得も減少する。その結果、政府や自治体に入る税収も減少し、一方では生活保護費などの社会保障給付が増加することになる。
 つまり進学率や就業状況の格差を改善する対策を進めれば、当事者の生涯所得の増加で全体の所得も増え、税収増につながり、政府や自治体の財政負担も軽減されることになる。調査した日本財団は「子どもの貧困は決して『他人事』ではなく、国民一人ひとりに影響しうる『自分事』である」と指摘している。まったく同感だ。
 調査では都道府県を深刻度などで4段階に分けている。このうち沖縄県は「全国平均より課題が深刻であるにも関わらず、全国平均より予算支出が低い」とする最も深刻な分類に入っている。
 さらに調査では深刻度と児童福祉費の支出の状況を分析した結果、「行政が子どもの貧困の実態を十分に把握していないために、実態と乖離(かいり)した状態で対策を行っている」ことも浮かんでいる。行政がさまざまな貧困対策に取り組んでも、実態を把握しなければ空回りだけして改善に結び付かないのだ。
 県は先月、県子どもの貧困対策推進計画の素案を発表した。34項目の数値目標を掲げ、さまざまな対策に乗り出す。全国一の深刻な状況を打破するためにも、実態を正確に把握し、改善につながる施策を早急に進めてほしい。