<社説>日米首脳会談 外交の名に値しない


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 一体何をしに行ったのか。言うべきを言わず、伝えるべきを伝えないのでは外交の名に値しない。

 日米首脳会談で安倍晋三首相は米軍普天間飛行場の5年内運用停止について全く言及しなかった。沖縄の基地負担軽減について首相は常々「できることは全て行う」と述べている。だが「行う」どころか口に出しさえしないのだから、空約束も甚だしい。
 もう一度確認したい。2013年、当時の仲井真弘多知事に対し、安倍首相が5年内運用停止について「努力を十二分に行う」と述べたのは、仲井真氏が辺野古埋め立てを承認する前のことだ。その際、何かが条件という話は一切示されていない。
 政府は当初「全国の協力が必要」としていたが、15年夏には「地元(沖縄)の協力が必要」にすり替わり、最近では「辺野古移設への理解と協力が前提」と述べ始めた。
 自らが約束を果たさない責任を沖縄側の「協力」のせいにすり替えている。無責任極まりない。
 今回の会談でも「日米首脳は沖縄の負担軽減を進めることは合意した」のだそうだ。現下の沖縄で普天間の運用停止ほど強く求められている課題はない。それを放棄しておいて「負担軽減」とは、空々しいにも程がある。
 オバマ米大統領は辺野古移設をめぐる県と政府の訴訟について、なぜ和解に応じたのか尋ねた。それを日本政府は「移設計画の遅れに懸念を表明した」と表現する。
 だが、そう「翻訳」していいのか。これはむしろ、「辺野古移設計画の現実性に疑念を示した」ということではないか。
 オバマ氏が「(辺野古移設に)大きな支障がないようにしてほしい」と求めたことにもなっているが、本当だろうか。
 ジョセフ・ナイ元国防次官補や戦略国際問題研究所(CSIS)のジョン・ハムレ所長など米側の「知日派」の中に、沖縄への基地集中に疑念を持つ人がいるのは周知の事実だ。だが日本政府の方が県外移設に抵抗しているのである。
 だから米大統領の辺野古移設要求という圧力を捏造(ねつぞう)し、県外移設論をつぶそうとしているのではないか。今回も「辺野古が唯一の解決策」と強調したのは日本側だけで、米側は「唯一」などとは一言も言っていない点に注意すべきだ。日本政府の印象操作に振り回されないようにしたい。