<社説>空調補助一部廃止 切り捨てる理由はない


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 5月に入り、気温が上昇している。那覇では8日から3日連続で最高気温が30度を超えた。真夏日の教室で、騒音のため窓も開けられないとなれば子どもたちはどうなるか。

 米軍基地周辺の学校や保育施設などの防音事業の空調(エアコン)維持費補助を防衛省が一部廃止すると通告した。2016年度以降に改築や機器更新を実施設計する場合、新たな機器については維持費の補助を打ち切る。
 空調維持費補助は米軍嘉手納基地や普天間飛行場、キャンプ・シュワブやキャンプ・ハンセン周辺、米軍機の飛行ルートとなっている地域の学校・施設が対象だ。現行は国が空調にかかる電気使用量の9割と基本料の全額を補助している。
 対象はうるささの度合いに応じて4等級に分けられ、廃止されるのは下の3、4級。県内に4級該当はなく、廃止は3級となる。
 比較的下の等級だからといって、影響が少ないとは言えない。3級のうるささの基準は50分の授業中に75デシベル以上の騒音が10回または80デシベル以上が5回以上である。
 環境省によると、70~80デシベルの騒音は主要幹線道路のそばや航空機の機内、セミの声が挙げられる。人が静かだと感じるのは45デシベル以下で、望ましいのは60デシベル以下だといわれている。授業中に5回も10回もセミの声並みの音が響けば、授業が中断され、集中できなくなるであろう。
 防衛省の対応は問題である。維持費補助の訓令は4月上旬までに変更したが、当事者である県などへの通知は4月14日付だ。制度を変える前に協議するのが筋である。廃止対象についても本紙の取材に15年度の実績から県内108校、2億1800万円と回答したが、どこが打ち切りの対象なのか積極的に情報開示をしていない。
 嘉手納基地は15年度に70デシベル以上の騒音が前年度より6・1%増の4万7685回に上った。住民からの苦情も302件と過去最多だ。
 中谷元・防衛相は空調機器更新時の補助率を最大1割引き上げることで事態を収めようとしているが、毎年の維持費を切り捨てる理由にはならない。空調補助は米軍基地から派生する騒音被害に対する補償である。発生源がなくならない限り、国が廃止する理由はない。