<社説>着陸帯工事再開 負担軽減にはならない


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 政府は米軍北部訓練場の一部返還の条件として建設するヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の工事を近く再開する。住民の反対を抑え込んで工事を強行し、「沖縄の負担軽減」と胸を張るつもりなのだろうか。

 着陸帯の建設は1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告に盛り込まれた。訓練場7513ヘクタールのうち3987ヘクタールを返還する代わりに、残余の部分に着陸帯を建設するというものだ。
 防衛省は全6着陸帯の完成後に米軍に提供する予定だったが、残り4カ所の計画に遅れが生じたことから2015年2月にN4地区の2カ所を先行提供した。
 N4は東村高江集落に最も近い。そこでMV22オスプレイが盛んに離着陸訓練し、ブロック片をつり下げての飛行訓練まで行っている。
 今年6月中旬からは連日、夜間まで離着陸を繰り返し、20日には午後10時すぎに最大99・3デシベルの騒音が確認されている。100デシベルのうるささは「電車が通るときのガード下」と表現される。
 東村では児童生徒が夜間飛行の騒音の影響で睡眠不足となり、学校を欠席する事態が起きている。村議会はN4の使用禁止を求める決議を全会一致で可決したが、米軍は決議翌日に離着陸を強行している。
 そもそもN4の環境影響評価(アセスメント)にオスプレイの運用は想定されていない。高江小中学校で観測されたオスプレイの低周波音は環境影響評価の「心理的影響」や環境省が設定した「物的影響」の基準となる閾値(いきち)を上回っている。前提の違う欠陥アセスだ。
 北部訓練場を除く地域は8月以降、「やんばる国立公園」に指定される。北部訓練場が返還されれば国立公園に組み入れられる可能性はある。しかし、上空をオスプレイが飛び交い、騒音をまき散らす基地と背中合わせの森が、北部3村の悲願である世界自然遺産指定を阻むことになりはしないか。
 SACO最終報告の冒頭にはこう書いてある。「(日米)両国政府は、沖縄県民の負担を軽減し、それにより日米同盟関係を強化する」。民家からわずか400メートルの場所にオスプレイの着陸帯を建設することが「県民の負担軽減」になるのか。真の負担軽減は着陸帯を造らず、やんばるの森を地域に返すことである。