<社説>知事の馬毛島視察 普天間問題考える契機に

 翁長雄志知事が鹿児島県西之表市の馬毛島を視察した。島のほぼ全域を所有する男性は、翁長知事に「米軍基地としては十二分にやっていける」と説明したという。

 馬毛島は、おおさか維新の会が米軍普天間飛行場の5年以内の運用停止に向けた訓練の移転先として提案している。だが知事の視察目的は、馬毛島に訓練を移転したいとか、普天間飛行場自体を移設してほしいということではない。
 政府が「唯一の解決策」とする名護市辺野古以外にも、移設候補地は国内にあるとの問題提起である。辺野古が「唯一」ではないことを政府に突き付け、撤回させる手段の一つとみるべきだ。
 それでも、安倍政権は沖縄の「地理的優位性」などを挙げて「辺野古が唯一」と繰り返すだろう。だが「地理的優位性」は専門家が否定している。本土の反発を回避したいことが真の理由だ。
 普天間飛行場返還合意時の官房長官だった梶山静六氏は「必ず本土の反対勢力が組織的に住民投票運動を起こす」と本土側の反発を恐れ、辺野古が普天間飛行場の移設先になったと理由を書簡に記していた。
 馬毛島は種子島の西約12キロにある無人島である。東京・硫黄島で暫定的に実施している米軍空母艦載機の陸上空母離着陸訓練の移転候補地に挙がっている。だが観光への影響や事故の懸念から反対の声が出ている。
 そのような中での翁長知事の視察に対し、辺野古移設への反対運動などに共感してきた地元の市民団体関係者らは「大変遺憾」とする声明を発表した。西之表市も、沖縄県から事前の説明などがなかったことに不快感を示している。丁寧に説明し、理解を得ることを県には求めたい。
 戦後71年が経過しても、沖縄には在日米軍専用施設の74・46%が集中し、圧倒的反対にもかかわらず辺野古新基地まで押し付けられようとしている。沖縄県民は命の危険にさらされ続けていることも、国民全体で共有してほしい。
 翁長知事の視察への反発によって、米軍基地は国内のどこでも歓迎されない迷惑施設であることが改めてはっきりした。普天間飛行場の危険性除去は移設でいいのか、移設を条件としない閉鎖・撤去がいいのか。知事視察を国民が普天間問題を深く考える契機としたい。