国の天然記念物ノグチゲラは非常に特異な鳥だ。沖縄本島北部やんばるの森にしかいない。世界で最も分布域の狭いキツツキの一種だ。
キツツキの仲間は、名の通り丈夫なくちばしで木をつつき、樹皮下に潜む虫を食べる。だが、ノグチゲラは木だけでなく、地上に降りて土をつつき、セミの幼虫やクモなどを掘り出す。約200種のキツツキの中で、土中から餌を得るのが報告されているのはノグチゲラだけだという。
さらに毎年同じ雄雌でつがいをつくる「一夫一婦制」で、雌は木をつついて餌を採る一方、雄は地中の虫を掘り出す。餌を食べ分けることで狭いやんばるの森で争わずに生き延び、種を維持したとみられる。いわば、やんばるの森の象徴だ。
米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)新設計画で、候補地のG、H両地区周辺でノグチゲラの巣穴が少なくとも計29カ所確認されていた。ヘリパッド建設に伴い、那覇防衛施設局(当時)が2007年にまとめた環境影響評価(アセスメント)図書に記されていた。
同じ調査で、既存のヘリパッドがあったN4地区は巣穴は1カ所だけだった。ヘリパッドの造られていないG、H地区は自然豊かな森の証左になるだろう。
しかし北部訓練場の部分返還に伴うヘリパッド6カ所の移設先を決めた時、日米両政府は自然保護を優先しなかった。
優先されたのは、米軍が強く要望したG地区に近い宇嘉川を使った水域訓練と兵士の救助支援訓練ができる場所だった。米海兵隊が「戦略展望2025」で記すように多様な訓練のできる「土地を最大限に活用する訓練場を開発」するための選定だった。
ノグチゲラは国際自然保護連合や環境省が指定する絶滅危惧種で、保護は急務だ。地元の東村は生息域への無断立ち入りを禁止するノグチゲラ保護条例を制定した。
種の保存が必要とされているからこそ、ヘリパッドを建設する沖縄防衛局は3~6月の営巣期間は音の出る工事を休止するとしてきたはずだ。
県鳥でもあるノグチゲラを残すには、貴重なやんばるの森を維持することである。軍事機能強化を優先して、森を切り開き、オスプレイの音や排気熱で環境を破壊することではないはずだ。