<社説>オスプレイ隠蔽 米軍基地が障害だ ヘリパッド止め世界遺産に


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 ヘリパッド建設を巡る国のまやかしが、また明らかになった。那覇防衛施設局(当時)が2007年に作成した環境影響評価図書によると、県がオスプレイの運用をただしたのに対し「使用機種の変更はない」と回答していた。

 政府は早くから米軍のオスプレイ配備計画を知りながら、その事実を隠蔽(いんぺい)し辺野古新基地建設、米軍北部訓練場内へのヘリパッド建設を進めてきた。
 06年には在沖米軍のトップが普天間飛行場へのオスプレイ配備を明言。ヘリパッドでのオスプレイ運用が疑われたが防衛施設局は否定し、うそにうそを重ねたのだ。

 米軍の運用を優先

 うその始まりは1996年。沖縄の負担軽減に向けた日米特別行動委員会(SACO)最終報告。米側が草案にオスプレイ配備を記載したが、国内の反響を恐れた日本側が削除させたのだ。
 07年の環境影響評価図書を巡っては、ヘリパッド建設候補地周辺で、国の特別天然記念物ノグチゲラの多数の巣穴が確認されていたことも明らかになったばかりだ。
 オスプレイの沖縄配備計画そのものを隠蔽し、ヘリパッド建設に当たっても貴重生物への配慮を後回しに、米軍が求めるオスプレイ運用のヘリパッドを優先した。
 沖縄本島北部地区は、ヘリパッド建設が強行される場所を含め、世界にここだけの固有種のヤンバルクイナ、ノグチゲラ、オキナワトゲネズミをはじめ貴重な動植物、絶滅危惧種が生息している。海にはジュゴンが泳ぎ、サンゴが群生する。「東洋のガラパゴス」と称される自然の宝庫である。
 辺野古新基地とヘリパッドの建設で、豊かな自然が破壊され台無しになるのは明らかだ。もとより住民の命と健康も脅かされる。
 北部の国頭、東、大宜味の3村にまたがる陸・海域が近く「やんばる国立公園」に指定される。しかし米軍北部訓練場は指定区域から除外される。豊かな自然がないからではない。国の管理が及ばない米軍施設だからだ。
 ヘリパッド建設を条件とする北部訓練場の返還予定地も指定区域から外されている。将来、返還されれば国立公園区域に組み入れるというのが環境省の考えだ。
 本末転倒ではないか。守るべきは北部の自然か米軍基地か。国立公園の区域を、米軍基地のフェンスで線引きすべきではない。不離一体の北部全体の国立公園化を最初に考えるべきだ。基地を優先し自然保護が後回しでは、自然環境保護行政の発想が逆転している。

 基地に及ばぬ国内法

 ヘリパッド移設は北部訓練場の過半返還の条件とされ、それがために国頭、東村の村長、県もヘリパッド建設を容認せざるを得なかった。苦渋の選択である。
 ヘリパッド建設を受け入れなければ北部訓練場の返還が進まず、返還地区の国立公園化も進まない。さらに将来の世界自然遺産登録も進まない-。そのような倒錯した論理で、政府はヘリパッド建設を進めているように見える。
 しかし立ち止まって考えるべきだ。交換条件のヘリパッド建設で貴重生物の生活環境を犠牲にする国立公園でいいのか。かえって将来目指すべき世界自然遺産登録への足かせとならないか。
 本島北部を含めた琉球諸島は03年にも世界自然遺産の国内候補地に挙がった。しかし環境省は「国内法で国立公園に指定して保護するなどの整備が不十分。希少種が多い北部地区に米軍基地が存在し国内法が及ばない」ことを理由に、推薦を見送った。
 世界遺産登録に立ちはだかっているのは米軍基地だ。その認識を新たにする必要がある。
 ノグチゲラの繁殖期に工事を止めるといった小手先の対応では貴重な生態系は守れない。ヘリパッドの建設を中止するしかない。
 その上で本来の自然保護の趣旨に基づいて国立公園の区域を考え、北部訓練場を返還させ、世界自然遺産登録を見据えるべきだ。