<社説>概算要求減額 基地絡めず沖縄振興支援を


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 内閣府は2017年度の沖縄関係予算の概算要求額を3210億円とする方針だ。政府との約束である総額3千億円以上を確保したかに見えるが、本来、国の予算で措置すべき那覇空港滑走路増設と、沖縄科学技術大学院大学関連分を除けば、3千億円を大きく割り込む。納得できる額ではない。

 概算要求額は16年度の概算要求より約220億円の減額、15年度と比較すると約580億円の減額となる。
 15年度の要求額は3794億円で、前年度より386億円もの大幅増額だった。14年秋の県知事選を前に、当時の仲井真弘多知事を後押しするものとみられた。
 普天間飛行場の辺野古移設を承認した仲井真前知事から、承認を取り消した翁長雄志知事に代わると2年度連続の減額である。
 知事が代わり、辺野古移設の受け入れから反対に変わるのに合わせたような概算要求額の増減は、政府の財政規律に疑問を抱かせる。政府には政治のさじ加減を疑わせぬ適正な予算措置を求めたい。
 安倍政権は13年の経済財政運営基本方針「骨太の方針」で、沖縄を「日本経済活性化のけん引力」と位置付けた。今年6月に閣議決定した「骨太の方針」にも「沖縄振興」の項目に「成長するアジアの玄関口にある沖縄の優位性と潜在力を活(い)かし、日本のフロントランナーとして経済再生のけん引役となるよう、国家戦略として沖縄振興策を総合的・積極的に推進する」と明記している。
 国家戦略として沖縄振興策を積極推進することが日本の経済再生に役立つ。予算編成に当たってもこの政府方針を堅持すべきだ。
 概算要求の減額は、沖縄振興一括交付金の減額が大きく響いた。確かに一括交付金の執行率は、制度開始当初の50%台からは改善したものの、なお70%台にとどまる。
 県の各部局は予算の必要性、執行率の改善や産業、経済振興につながる一括交付金の活用など、説得力ある理論武装を練り上げ、予算増額を働き掛けてもらいたい。
 政府は「基地問題と沖縄予算のリンク」の方針を示した。しかし沖縄予算や酒税ほかの税制拡充延長への対応に基地問題の進展を取引材料として絡めるのは、沖縄振興特別措置法の趣旨に反する。
 沖縄振興策の推進が日本の経済再生、国益にかなうとする政府方針に政府自ら背いてはならない。