<社説>粟国空港事故1年 安心託せる路線の再開を


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 昨年8月の粟国空港での航空機事故から1年。路線運休が長期化しているが再開のめどは立っていない。住民や観光客が安心して利用できる路線の再開へ県、国、航空会社の責任ある対応が急がれる。

 事故を起こした第一航空は路線を再開させたい意向だ。しかし新城静喜村長は「第一航空の法令違反や安全運航上の問題点が多い」と強い不信感を示し、「新会社に要請することも検討したい」と第一航空以外の就航をも視野に入れている。
 運輸安全委員会の調査報告書案は副操縦士が機体を制御できず、機長も対処できなかった「人為ミス」を指摘する。着陸時に前輪が正面を向いた状態かを確認しない信じ難いミスも指摘した。さらに副操縦士は必要な「頭部MRI」検査を受けず、十分な事前の訓練も受けていなかった。
 事故原因にこれほど多くの人為ミスとずさんな運航体制が指摘される中で、村長が別会社への切り替えを要望するのは当然だ。
 問題は粟国空港の航路再開にとどまらない。第一航空は昨年中に石垣-多良間、石垣-波照間線の就航も予定していたが、粟国空港の事故を受け両路線の就航も見通しが立たない状況だ。
 多良間、波照間線を含め従来方針通り第一航空に就航させるべきか、現実的に第一航空に代わり就航を引き受け、安全を託せる会社があるのか。運輸安全委の最終的な事故報告書が事故原因にどのような判断を下すか。事故原因や法令違反の重大性によっては業務停止の行政処分もあり得るのか。
 不確定な要素が多く成り行きは見通し難い。
 県は粟国村長から「別会社の就航」を要請されている。県としては今後の進展に応じて、速やかな対応が取れるように第一航空や他の航空会社、国土交通省など関係機関と綿密な調整を進めてもらいたい。
 第一航空は事故後に国交省大阪航空局の事業改善命令に従い、必要な訓練の実施や体制の見直しを進めているという。第一航空が路線を継続する場合でも、安心して運航を託せる体制の点検が不可欠だ。
 いずれにしろ最優先すべきは搭乗する人命の安全確保だ。事故原因を徹底究明した上で、安全運航の体制、マニュアルを総点検し、安心して運航を託せる航空会社を選定してもらいたい。