<社説>環境会議沖縄大会 基地の「不正義」正す契機に


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 環境・平和・自治・人権-。市民が豊かな生活を送るために守られるべき普遍的価値と軍事基地は相いれない。過重な米軍基地が横たわり、自衛隊も増強される沖縄の実情は「不正義」そのものであり、環境権、環境民主主義を確立するためにも正さねばならない。

 日本環境会議沖縄大会の3日間の濃密な論議を要約すれば、こうなろうか。
 大会は基地の島に横たわる環境破壊と汚染の深刻な実態や原子力発電の危うさなどを再確認した。大会宣言は「沖縄の民意を尊重した辺野古新基地、高江ヘリパッド建設の中止」を求め、基地立ち入り調査権の確立などを求めた。
 沖縄を起点に民主主義の熟度を高め、日本全体の環境問題の課題を改める契機にしてほしい。
 全国から第一線の研究者、活動する市民など400人余が参加した。六つの分科会は環境問題を軸にしつつ、沖縄の不条理を反映して、地方自治、「自己決定権」も盛んに論じられた。青年世代が国境を超えて環境問題克服の道筋を探ったことも成果だろう。
 再三論じられたのが、辺野古違法確認訴訟の福岡高裁那覇支部判決だった。環境会議名誉理事長の宮本憲一氏は「基地建設は恒久的に環境、住民福祉、地域の発展に決定的影響を及ぼす」と指摘した。
 沖縄の民意を無視し、辺野古新基地建設に突き進む安倍政権の対応を容認した判決に対し、「近代的法治国家ではない」と批判した。
 その上で、在沖米軍基地による環境破壊を防ぐため、先駆的な県条例の制定による環境権確立を提言した。具体的実践につなげたい。
 在沖米軍基地の騒音や土壌などの汚染をフェンス外で得られるデータを駆使して立証する活動が進歩を遂げている。その報告を踏まえつつ、過去と現在の基地汚染に立ち向かう内なる課題も浮かんだ。
 こうした活動を担う河村雅美氏は「(自治体や議会などに)跡利用に及ぼす汚染の影響を小さくしたいという力学が働く。日米地位協定改定要求も具体性に欠ける」と指摘した。
 中南部の主要基地の返還、跡利用が迫っている。自治体が基地汚染克服への主体性を強め、市民と協働して汚染データを公開させ、日米両政府に改善を促すシステムの確立が欠かせない。
 専門知識を持つ研究者や市民をどう増やし、連携を強めるか。大会の成果を課題克服に生かしたい。