<社説>自宅・テント捜索 県警は「過剰捜査」慎め


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 ヘリパッド建設反対運動の中心人物が逮捕され、自宅や現場の運動拠点のテントが県警の捜索を受けた。必要な捜査だったのか。市民の反対運動を萎縮させる過剰捜査がないよう自制すべきだ。

 沖縄平和運動センターの山城博治議長は米軍北部訓練場内のフェンスの鉄線を切断した器物損壊容疑で逮捕、勾留されている。
 県警は21日、山城議長の自宅と東村高江の反対市民のテントを強制捜索した。
 沖縄平和運動センターは5・15平和行進を主催、県道104号越え実弾砲撃演習の廃止要求、オスプレイ配備、辺野古新基地建設反対や米軍事故・事件への抗議など、県内の反戦・平和運動を担い続ける大衆運動組織である。
 中心幹部の山城議長の逮捕で組織、反対運動のダメージは大きく、運動の萎縮を意図した「狙い撃ち」の批判が根強い。
 警察や検察の逮捕・勾留は「証拠隠滅、逃亡の恐れ」など要件の規定がある。鉄線切断の立証のために逮捕し、さらに10日間も勾留する捜査上の必要があるのか。その上、自宅にまで踏み込む強制捜査が必要か疑問を拭えない。
 那覇地検の勾留請求を那覇簡裁は却下した。勾留の必要性に相当の疑義があったからだろう。
 簡裁の却下に検察が異議を唱え、那覇地裁が勾留を認めた。一方、これと並行して県警は「那覇防衛施設局職員を揺さぶった」とする傷害などの新たな容疑で山城議長を再逮捕している。
 一事案の容疑で逮捕捜査中に、別件での逮捕は異例だ。弁護士らは「器物損壊での勾留は厳しいと見て傷害容疑で再逮捕したのでは」「逮捕自体が目的では」と疑問視している。何が何でも山城議長の身柄拘束を継続する。恣意(しい)的で過剰な捜査と疑われているのである。
 反対運動のテントの捜索も問題だ。不必要で安易な強制捜査は、反対運動の市民を犯罪人視する誤解や偏見を助長しかねない。
 議長宅やテントの捜索と同じ日に、名護署では87歳の高齢女性の聴取も行われた。沖縄戦で火炎放射を浴び、全身に大やけどを負った体験を持つ女性である。聴取の最中、反対運動を批判する団体のサイレン音が繰り返し流されたという。
 基地に反対する県民は被害者であって加害者ではない。基地建設に反対する県民の活動の自由は最大限、保証されねばならない。