本末転倒というほかない。優先すべきは米国ではなく地元との信頼関係ではないのか。
やんばる国立公園を含む「奄美・琉球」の世界自然遺産登録を巡り、環境省は2013年以降に米軍とやりとりした文書を「一切不開示」とすることを決めた。
調査団体インフォームド・パブリック・プロジェクト(IPP)の河村雅美代表の開示請求に対する環境省の回答だ。「米国との信頼関係を損なう恐れ」が不開示の理由だ。
環境省の姿勢は不可解だ。自然遺産登録に関するやりとりを公にすることが日米関係を損ねることになるのか。しかも、文書そのものを「米軍との間で非公開とすることを前提に作成している」という。理解し難い話だ。
国頭3村をはじめ北部市町村が求めている世界自然遺産登録の阻害要因となってきたのが米軍北部訓練場の存在である。環境省と米軍の交渉は地元自治体の関心事であり、関連する文書の公開は自治体にとっても有益なはずだ。
非公開前提で文書を作成し、公開を拒むという地元無視の行為を放置してはならない。IPPは、ステークホルダー(住民)に対する政府の説明責任の欠如を指摘し、行政不服審査法に基づき、環境大臣に審査請求する方針だ。当然の指摘であり、環境省は速やかに文書公開に踏み切るべきだ。
環境省は今年9月、国頭3村にまたがる陸・海域の計1万7300ヘクタールを国立公園に指定した。世界自然遺産登録に向けた環境保護策の一環だ。それとは真っ向から対立するのが、米軍北部訓練場におけるヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の建設強行である。
建設に伴う2万4262本の立木(りゅうぼく)伐採は、貴重な動植物がすむやんばるの自然環境に多大なダメージを与えるはずだ。ヘリパッドの完成後、MV22オスプレイの演習が激化すれば、生態系への悪影響は避けられないであろう。
日本の環境法制に基づき、基地建設や軍事演習から自然を守るのは環境省の責務である。米軍とのやりとりを記した文書を公開し、責務を果たすべきだ。米軍基地から派生する自然破壊と向き合うべき環境省の基本姿勢が問われている。
日米関係を理由に米軍基地を環境施策の枠外に置いてはならない。やんばるの自然保護という原点に立脚した対応を環境省に求めたい。