<社説>独との爆音差別 沖縄だけに苦痛強いるな


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 米軍にとって不都合な真実を正直に認めた発言である。在沖米軍基地の周辺住民の生活を脅かす二重基準が明確になった。

 嘉手納基地で繰り返されている深夜・未明の外来機離陸を巡り、米空軍制服組トップの参謀総長が「(ドイツの米航空基地司令官の在任時には)地元自治体に離陸を通告し、なぜ飛ぶのかを確実に知らせていた」と述べた。
 米空軍機が居座る航空基地の運用が沖縄とドイツでは全く異なる。沖縄の住民だけに差別的な苦痛を強いることは許されない。
 米軍が掲げる「良き隣人」と懸け離れた基地運用の実態が判明しただけに、ウチナーンチュの命の重さを軽んじている基地運用の是正を一層強く迫るしかない。
 未明に及ぶ外来機の離陸は予告なしに行われる。午前2時から5時すぎに、静寂が突き破られる住民の負担はあまりに重い。
 突然、電車が通るガード下の騒音(約100デシベル)や、自動車の前1~2メートルで聞く警笛に匹敵する110デシベルの爆音に眠りを突き破られる様子を想像してほしい。
 安眠妨害にとどまらず、平穏に暮らす権利を容赦なく侵す。心拍数が上がった大人は寝付けなくなり、赤ん坊は泣きやまなくなる。
 米サウスカロライナ州軍のF16戦闘機6機が10月19、20日未明に離陸し、100デシベルを記録したが、嘉手納基地司令官は外来機は指揮系統に入らず、未明離陸は避けられなかったと釈明した。その上官はドイツで、離陸することやその時間に飛ばねばならない理由まで丁寧に説明していた。
 実情を探れば、本国に戻る操縦士が安全な明るい時間帯に着陸できるよう逆算して未明に嘉手納基地を飛び立っている。経路などの運用で改められる措置さえ手をこまねく罪は深い。未明に数千人以上の住民をたたき起こす爆音が平時の米本国で鳴り響くだろうか。
 イタリアの米航空基地は伊軍司令官の許可がなければ訓練できず、1日の離着陸回数を44回に総量規制されている基地がある。夏場の昼寝の時間帯は一切飛ばず、住民の生活が最優先されている。
 米軍は深夜・未明の離着陸を原則禁止する騒音防止協定を破り続け、県民の人権をないがしろにしている。より罪深いのは、米軍の二重基準を放置し、改善を迫らない日本政府だ。