日程ありきの強行ぶりが際立つ。菅義偉官房長官が表明した「年内」返還まで残り2カ月弱。オバマ米大統領の任期中に、日米が合意した返還を果たし「沖縄の基地負担軽減」をアピールしたいのだろう。
米軍北部訓練場の部分返還を条件とする東村と国頭村にまたがるヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設で、政府は2017年9月までだった工事期間を前倒しして今年12月中旬に建設工事を終える予定だ。12月20日にも返還式典を開き、関係閣僚やケネディ米駐日大使らが並ぶ華々しい演出も検討している。
今年7月の工事再開以降、「年内」の目標を果たすため、政府はヘリパッド工事を遮二無二進めてきた。そこに自然環境や市民運動への配慮はない。
自然破壊の一例はヘリパッドG地区と宇嘉川河口を結ぶ訓練道建設だ。沖縄防衛局は2007年の環境影響評価(環境アセス)で、手作業での樹木伐採予定だったのを、重機による伐採に替えた。
アセスには近隣のG、H両地区周辺でノグチゲラの巣穴を29カ所確認したと記されているが、この訓練道だけで伐採量が4千本超と大幅に増える。
工事はこれまでにも重機や資材を民間ヘリだけでなく自衛隊のヘリを使って運んだ。
根強い反対派の抗議行動に対し、6府県から機動隊員約500人を高江に配置した。その中で市民への「土人」発言が出た。
反対運動のリーダーをはじめ市民の逮捕も辞さない。
高江区の住民には「迷惑料」で反対の声を封じる。
やんばるの森の自然環境に大きな負荷を与えても構わない。市民とのあつれきが強まっても構わない。政府が圧倒的な力を誇示して人口の少ない地域に基地負担を押し付ける差別の構図が表れている。
そもそも政府は北部訓練場の約半分の返還と引き換えと言うが、返ってくるのは米軍が「戦略展望2025」で「約51%の使用不可能な訓練場」と指摘した部分だ。新たなヘリパッドは「限られた土地を最大限に活用する訓練場を新たに開発する」とも記す。米軍にとってはオスプレイが使える機能強化された基地を手に入れるものだ。
沖縄にはすでに過剰な米軍基地が存在する。12月20日は新たな負担の始まりになってしまう。