沖縄防衛局の人権感覚を疑う。防衛局はヘリパッド建設に抗議する市民の写真を載せ「悪質な違法行為」と断定する説明資料を作成した。しかもその資料が外部の個人のフェイスブックに載り「悪質・違法」と名指す情報が流布されたのである。
二重の人権侵害であり、抗議活動、県民への偏見を助長する意味で機動隊員の「土人発言」と同根だ。防衛局長、防衛相の見解をただしたい。
資料は9ページ以上で、米軍提供区域内で抗議する市民の写真を数多く掲載し「違法侵入者」と記載する。「違法かつ悪質な妨害行為」として沖縄平和運動センター山城博治議長の写真を9枚掲載した。
防衛局は「対外的な説明の際に使用している」と説明している。市民の抗議活動を「違法・悪質」と喧伝(けんでん)しているのである。それがネット上で公然と流布された。抗議行動を「違法・悪質」と見なす偏見を助長するものだ。
山城議長ら市民の活動を「違法」と断定する根拠は何か。議長は公務執行妨害罪などで起訴されたが、有罪判決が確定したわけではない。多くの市民は訴追すら受けていない。防衛局の権限を逸脱する名誉棄損ではないか。
肖像権の侵害はもとより、個人のプライバシーが侵害され、憲法が保障する表現の自由、基地建設に反対する活動の自由が蹂躙(じゅうりん)されていることは明白だ。
防衛局は山城議長ら市民の人権を侵害し、市民の反対運動に対する偏見を助長する文書を廃棄すべきだ。外部に提供した資料を回収し、ネット上からも削除するよう早急な対応を求める。
国家公務員倫理法第1条は、国家公務員は「国民全体の奉仕者であり、職務の執行の公正さに対する国民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図り、公務に対する国民の信頼を確保することを目的とする」と法の趣旨を記している。
米軍基地建設ありきで抗議の市民を「違法・悪質」と決めつけ、偏見を助長する文書の作成と外部提供は国民の信頼を大きく損ねるものだ。
資料は抗議の市民を「環境保全措置を妨害」と難じてもいる。ヘリパッド建設で広大な森林を伐採する環境破壊を棚に上げて市民を非難するのは詭弁(きべん)でしかない。オスプレイ配備の隠蔽(いんぺい)に始まる政府のモラルハザード(倫理感の欠如)こそ問題だ。