<社説>沖縄ヘイト告発 辛淑玉さんを支持する


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 デマを拡散し、基地のない平和な島を望む市民に対する憎悪を扇動するような番組を、看過するわけにはいかない。

 東京メトロポリタンテレビジョン(東京MX)の番組「ニュース女子」が米軍北部訓練場のヘリパッド建設に反対する市民を中傷した問題で、名指しされた市民団体「のりこえねっと」共同代表の辛淑玉(シンスゴ)さんが、放送倫理・番組向上機構(BPO)に対し、訂正放送や謝罪など人権救済を申し立てた。辛さんの申し立てを全面的に支持する。
 「ニュース女子」は1月2日の放送で沖縄の基地問題を特集し、ヘリパッド建設に反対する市民を「過激派デモの武闘派集団『シルバー部隊』」とレッテルを貼り、「テロリスト」呼ばわりした。「反対派が救急車を止めた」と虚偽の放送をし、危険でもないのに現場を取材せず「反対派の暴力で近寄れない」と印象操作する。辛さんについては「反対運動を扇動している黒幕」「反対運動参加者に『日当』を出して『雇い入れ』ている」などとやゆした。
 「ニュース女子」は16日の放送の最後にテロップで「様々なメディアの沖縄基地問題をめぐる議論の一環として放送致しました」と開き直った。制作したDHCシアターは、番組への批判について「誹謗(ひぼう)中傷」と反論し、「基地反対派の言い分を聞く必要はない」と居直っている。
 対立した見解がある場合、双方の言い分を取材するのは報道のイロハである。東京MXテレビはそれを怠り、取材を受けていない辛さんを公共の電波を使って誹謗中傷した。同時に新基地建設に反対する人々を事実に基づかず中傷し、おとしめた。まさに「沖縄ヘイト」である。
 辛さんが指摘するように番組が「『まつろわぬ者ども』を社会から抹殺するために、悪意を持って作られ、確信犯的に放送された」のであれば、報道機関として一線を越えている。権力の監視こそ報道の使命であるはずなのに、70年以上も基地を押しつけられ構造的差別にさいなまれてきた沖縄と向き合う姿勢が全くみられない。
 BPO放送人権委員会の厳正な審議・審理を望む。東京MXテレビに対して、あらためて番組の訂正および辛さんと誹謗中傷された人々への謝罪、損なわれた人権の回復を求める。