<社説>空自F15脱輪 那覇空港の民間化進めよ


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 航空自衛隊那覇基地で新たな第9航空団発足とF15戦闘機の倍増を祝う新編記念式典が開かれてちょうど1年が過ぎる30日、F15の脱輪事故は起きた。民間機だけでも過密な那覇空港の運用が懸念されていた中での事故で、軍民共用空港の危険性を示したといえる。

 30日午後1時19分、那覇空港で離陸しようとしていた航空自衛隊のF15DJ戦闘機の前輪タイヤが外れる事故が起きた。機体はそのまま立ち往生し、滑走路は1時間50分閉鎖された。
 その影響は大きく、30日は44便が、31日も余波で4便が欠航した。分かっているだけで60便以上が欠航や遅れ、目的地変更などを余儀なくされた。
 離陸直前に前輪のタイヤが外れるという、航空評論家からも珍しいと指摘される事故だ。航空自衛隊はこの日も整備員による点検があり、異常はなかったという。そうであるならば自衛隊機の整備態勢に大きな疑問符が付く。
 機体の安全性もさることながら、今回の事故は那覇空港の過密化と、自衛隊との共用という二重の問題を改めて浮かび上がらせた。
 那覇空港の離着陸は年間15万5千回以上で、羽田や成田、福岡、関西国際に次ぐ国内5番目の多さだ。滑走路1本の空港としては福岡に次いで全国2番目だ。国土交通省那覇空港事務所によると、最盛期は1日500回以上の離着陸がある過密空港である。
 民間機だけでも年々増え、特に格安航空会社(LCC)の就航など国際線の便数が10年間で約5・9倍と著しく伸びた。人の移動を空路に頼る沖縄では、航空路線の拡大が沖縄への観光客数の増加を支えている。
 その中で、航空自衛隊は昨年1月、F15戦闘機を20機から40機に増やした。那覇基地での空自の緊急発進(スクランブル)も2016年度4~12月は608回で、前年同期の352回を大きく上回る。しかし、領空侵犯は1件もなかった。
 第2滑走路の建設が進んでいるとはいえ、沖縄県が観光客1千万人の目標を掲げ、全日空(ANA)の国際貨物ハブの活用を進める中、民間機の定時運行に支障を生じさせている自衛隊機は沖縄経済の阻害要因にさえなりかねない。事故の再発防止と空路の利活用を両立させるには、那覇空港を民間専用化するしかない。