<社説>空自F15飛行再開 原因不明では再発防げぬ


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 事故原因も不明なままの航空自衛隊那覇基地F15戦闘機の飛行再開に強く抗議する。直ちに飛行を中止し、納得のいく原因究明と全機の安全点検を要求する。

 事故からわずか4日後の飛行再開に怒りを禁じえない。原因究明どころか同型機の安全点検が尽くされたとは到底、信じ難い。
 昨年12月の米軍オスプレイ墜落で米軍は事故原因を解明せぬまま事故から6日後に飛行を再開した。空自F15の飛行再開は、米軍のみならず自衛隊も沖縄を軍事植民地と見なし、県民の命を軽視している証左だ。
 極めて重大な事故だ。F15は那覇空港で離陸前の「完全停止時」に前脚とタイヤのつなぎ目が破損し脱輪した。強い重量負荷がかかる着陸時でなく、停止状態で折損し脱輪したのである。
 これが離着陸の高速滑走時なら方向性を失って迷走、大破し、民間機を巻き込む重大事故の懸念すらあったのではないか。
 前輪を制御できず滑走路を外れてフェンスに激突した粟国空港での民間航空機事故を想起させる。
 事故の重大性の認識を欠き、あるいは矮小(わいしょう)化を意図して飛行再開を急いだ印象操作すら疑われる。
 昨年、那覇基地はF15を40機に倍増。中国機の領空侵犯を警戒する緊急発進が前年同期比(4~12月)で2倍近くに激増した。その訓練に伴う離着陸も大幅に増えているはずだ。
 急増する離着陸に伴う過酷な機体使用が、同型機の前脚にも金属疲労の深刻な劣化を招いてはいないか。後輪2脚にもその恐れはないか。機体構造の不具合が疑われ、事故が再発する懸念を拭えない。
 軽微な脱輪事故として済ますわけにはいかない。空自は同型全機の目視、電流を流して亀裂を調べる非破壊検査を実施し安全を確認したとするが不十分だ。
 専門家は「放射線を当て金属内部の傷を詳細に調べる必要がある」とし、F15自体の老朽化、緊急発進の増加に伴う機体の過剰負担を指摘する。
 事故原因の解明と万全な安全点検を欠いた飛行再開は、住民の不安だけでなく観光産業にも深刻な影響を及ぼしかねない。
 県や那覇市に一方的に通告し翌朝の飛行再開はあまりに不誠実だ。佐賀県へのオスプレイ配備で防衛省は地元議会に足を運び説明している。県、県議会への説明、記者会見など責任ある対応を求める。