トランプ米政権は2018会計年度(17年10月~18年9月)の国防費を現年度比約1割増、約6兆円も増額する軍拡路線を打ち出した。
中国、北朝鮮、ロシアなどの反発は必至だ。アジアや世界の安全保障環境を大きく揺るがし、新たな軍拡競争を招きかねない。
トランプ大統領は「米軍を再建し国防費を歴史的規模で拡大する」とし、核戦力の強化にも言及した。前政権のオバマ大統領がイラク戦後に国防費の削減、「核なき世界」を追求した流れに逆行するものだ。
米国防費の増額、軍事強化が沖縄にも悪影響を及ぼすことが危惧される。トランプ氏はこれまで海兵隊、海軍の艦船・潜水艦、陸軍兵力の増強を表明してきた。
海兵隊出身のマティス米国防長官は、中国の東・南シナ海への海洋進出に対し「米国の同盟国が脅威にさらされている。強い軍事力を維持する」と中国に対抗する軍事力強化を強調している。
ロイター通信は「日本やオーストラリアでの新基地の増設、空母、駆逐艦、攻撃型潜水艦、ミサイル防衛中隊の配備を検討」と報じた。
米国防費の拡大は在日・在沖米軍基地、訓練の強化に直結しかねない。米議会の予算審議など推移を注視する必要がある。
米政権の核戦力を含めた軍拡路線は、世界が再び軍拡競争に後戻りする転換点となりかねない。
トランプ氏は先日、核戦力拡大の意欲とともに、前政権が米・ロシア間で結んだ新戦略兵器削減条約の見直しを示唆した。同時に北朝鮮の核ミサイル開発に対しては「日本や韓国のミサイル防衛強化が対応策の一つ」と述べている。
米国の核戦力強化は、米ロの核軍縮交渉の大きな障害となろう。北朝鮮が日米のミサイル防衛を上回る核開発を急ぐ悪循環の恐れがある。同様に中国を念頭に置いた軍事強化が、中国の軍事強化を招く懸念も拭えない。
米国の軍拡予算を稲田朋美防衛相は「平和と安定に寄与することを期待する」と歓迎するが安易に過ぎる。
南シナ海の軍事強化に自衛隊の共同行動を求められないか。防衛省が検討する米軍の迎撃システム・高高度防衛ミサイル導入には数千億円を要する。
米国の軍拡路線を無批判に追従すべきではない。「日米同盟」が新たなリスクと費用負担の「日米軍拡同盟」に陥ることを危惧する。