<社説>基地騒音コンター 国は住民被害に向き合え


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 基地周辺の防音工事対象の根拠となる騒音コンター(騒音分布図)を全国的に見直している防衛省は、米軍普天間飛行場については見直しを実施しないことが分かった。移設・返還に取り組んでいることを理由にしている。

 5年以内と約束した普天間飛行場閉鎖をほごにしている上に、返還予定だから実施しないという政府の姿勢は、住民の騒音被害に背を向けるものと言わざるを得ない。政府は被害の実態に向き合い、真摯(しんし)に被害を減らす努力をすべきだ。
 騒音コンターとは「加重等価平均感覚騒音レベル」(うるささ指数、W値)によって航空機騒音の分布範囲を地図の等高線のように示す図である。W値は、瞬間的な音の大きさだけでなく発生頻度や時間帯などの要因を考慮して算出される。
 防衛施設周辺生活環境整備法はこの騒音コンターに基づき、W値75以上の地域で防音対策工事を行っている。現行コンターに基づく工事対象区域は1983年9月に指定されている。沖縄の基地では外来機が増えており、2012年には従来の機種と異なる経路で飛ぶオスプレイが配備された。騒音の状況は大きく変化している。
 全国では、コンター更新の結果、防音工事の対象範囲が大幅に縮小した例がある。そのため、見直し作業が進められている米軍嘉手納基地の周辺自治体は見直し作業の中止を求めている。同時に、W値75未満の地区にも防音工事の範囲を広げるよう要求している。嘉手納基地も普天間飛行場も騒音の状態は悪化しており、範囲は広げられるべきだ。
 オスプレイは低周波騒音による被害も指摘されている。渡嘉敷健琉球大准教授ら専門家は、低周波騒音を騒音コンターに反映するよう主張し、住民に聞き取り調査をして騒音全般に対する防音対策が必要だと訴えている。
 しかし、騒音コンターに基づく防音対策に本質的意味があるわけではない。防音工事をしても耐えがたい騒音の苦痛、被害はなくならない。重要なことは、国の責任で騒音被害の実態、睡眠障害や聴力障害などの健康被害を調査し、被害を発生させないようにすることだ。
 まず、米軍に騒音防止協定を順守させるべきだ。そういう姿勢のないままのコンター見直しの見送りは責任放棄でしかない。