米軍がアフガニスタンで過激派組織「イスラム国」(IS)のトンネル施設を狙い、大規模爆風爆弾(MOAB)による空爆を実施した。MOABは核兵器を除く通常兵器としては、史上最大の破壊力を持つといわれている。実戦使用されるのはこれが初めてだ。この爆弾の使用に踏み切る必要が果たしてあったのだろうか。
トランプ米政権は過剰な武力行使を自制し、国際協調の中で問題解決を図る道を選ぶべきだ。
MOABはイラク戦争中の2003年に実戦配備された。重さ約10トン、全長約9メートル、直径約1メートルと巨大な爆弾のため、通常の爆撃機には搭載できない。このため大型輸送機に搭載して空中投下される。
威力が及ぶ範囲は半径数百メートルから千メートル以上ともいわれ、きのこ雲が立ち上るほど強烈だ。配備から14年にわたって一度も使用されてこなかったのは、こうした爆発力のすさまじさ故に、慎重な判断が取られてきたのだろう。
今回、MOABを使用したことについて、アフガン駐留米軍トップのニコルソン司令官は「攻勢を維持するのに適切な武器」との声明を出し、正当化した。しかし親米派で知られるアフガニスタン元大統領のカルザイ氏はツイッターでの投稿で「これはテロとの戦争ではない。新しい危険な兵器の実験の場として、わが国を悪用した非人間的で最も残酷な行為だ」と批判した。
カルザイ氏の主張こそ本質的だ。投下されたアフガン東部ナンガルハル州では米特殊部隊員がISとの戦闘で死亡している。その報復として今回のMOABによる空爆が実施されたとの見方がある。圧倒的な軍事力を誇示し、米国に逆らうものは、徹底的にたたきつぶすという極めて乱暴な行動に映る。
アフガニスタンだけでなく、米国による軍事力行使は各地で続いている。シリアには化学兵器を使用したとして、巡航ミサイル「トマホーク」59発が撃ち込まれた。北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射に踏み切る可能性があるとして、原子力空母カール・ビンソンを朝鮮半島付近に向かわせて圧力を強めている。
トランプ大統領は「力による平和」の実現を外交政策の中心に掲げている。しかしこの強硬路線が世界を不安と混乱に陥れていることを知るべきだ。