衆院憲法審査会の「国と地方の在り方」を主題にした参考人質疑で、招かれた4人の識者全員が沖縄の自治権強化を求めた。沖縄が米軍基地の過重な負担を強いられていることへの強い疑問が示された。参考人の良識ある指摘を高く評価したい。
沖縄県の面積は日本の国土の0・6%にすぎない。そこに在日米軍専用施設の70・4%が集中している。さらに米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設も、県内世論調査を実施するたびに7、8割の県民が反対と回答している。
県知事選、名護市長選、衆院選、参院選では、辺野古移設反対を公約に掲げた候補者が全員当選した。それでも政府は沖縄の民意をくむことなく工事を強行し、近く埋め立ての護岸工事に着手する予定だ。どう考えても不条理であり、不平等だ。
参考人の小林武沖縄大客員教授(憲法学、地方自治法)は「地方自治をないがしろにするもの。国と地方の対等関係をまっとうに理解しているとは言えない」と政府の姿勢を批判した。
地方自治法は1999年、地方分権改革を目指すために改正された。国と地方の関係は「上下・主従」から「対等・協力」の関係に変わったはずだ。民意を踏みにじって新基地建設を進める政府の姿勢は、地方自治法の趣旨に反するのは明らかだ。
斎藤誠東大大学院教授は、基地の偏在を沖縄が訴えても「裁判所はほとんど答えない」と指摘した。辺野古の埋め立て承認取り消しで国が起こした違法確認訴訟で、福岡高裁那覇支部は県敗訴の判決文にこう記した。
「国防・外交に本来的権限と責任を負うべき立場にある国の不合理とは言えない判断が覆されてしまい、地方公共団体の判断が優越しかねない」
軍事的な安全保障で国と地方が対立したら、国の言うことに地方が逆らうことなど許されないと言っているに等しい。立法、行政、司法の三権分立の姿は、ここには見当たらない。
憲法92条には地方自治の基本原則が記されている。中央集権を抑制し、権力分散を図る役割が地方自治体にあることを指す。辺野古移設を強行する政府の姿勢は、明らかに憲法の精神に反している。参考人全員が主張したように、沖縄の自治権を尊重すべきだ。