<社説>年度求人初の1倍 量から質へ雇用変えよう


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 2016年度の県内の有効求人倍率が1・00倍となり、1968年度の調査開始以来、初めて1倍台を記録した。最悪の水準だったリーマンショック後の09年度(0・28倍)と比べれば、7年で約3・5倍も伸びたことになる。

 この間の沖縄経済の飛躍的な成長を裏付ける結果だ。入域観光客が4年連続で過去最高を更新するなど、沖縄経済をけん引する観光の好調さによるサービス関連産業や建設業の伸びに加え、高齢化社会に伴い医療福祉が雇用を増やした。
 経済自立へ向け、県内の雇用環境が改善したことを評価したい。一方で全国との差はまだ大きく、改善すべき部分は多い。今後は雇用の量を質の向上へと結び付ける努力が官民ともに求められる。
 県内で初めて有効求人倍率が1倍を記録した16年6月以来、8、9月こそわずかに落ち込んだものの、10月~17年3月は6カ月連続で1倍台を維持している。
 新規求人数は11万5705人で前年度比7・1%、7637人増えた。新規求人も7年連続の増加だ。産業別では製造業が19・9%、宿泊業・飲食サービス業が11・8%、建設業が9・7%など主要産業での堅調さがうかがえる。
 16年度の新規求人数のうち、2万9034人で25%を占める医療福祉は、調査が現在の分類となった05年度は全産業の求人数7万1754人に対し、9397人で13%だった。12年間で求人数が3・1倍に伸び、最多となった。社会の変化も反映した形だ。
 一方で全国の16年度平均有効求人倍率は1・39倍だった。県内平均が改善したとはいえ、まだ大きな開きがある。正社員の有効求人倍率は全国の0・89倍に対し、県内は0・40倍にとどまる。正規雇用の拡大は重要な課題だ。
 公共職業安定所(ハローワーク)ごとの有効求人倍率も、本島中部を管轄するハローワーク沖縄だけが0・89倍と低迷する。さらにサービス業を中心に人手不足から違法な長時間労働が指摘される例もある。
 好況の恩恵を受けられない地域や人があってはならない。雇用改善はこうした課題を克服してこそ、初めて実現できたといえる。
 沖縄経済は拡大が続く見通しだ。企業の努力だけでなく労働行政も均衡ある発展への道筋を共に描いてほしい。現状を維持しつつ、さらに改善されることを期待したい。