<社説>グアム移転見直し 在沖海兵隊の全面撤退を


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 ネラー米海兵隊司令官が在沖海兵隊のグアム移転計画の見直しを検討していると明言した。北朝鮮の核・ミサイル開発の進展で、ミサイルの射程にグアムが入りかねないことが背景にある。

 日米両政府は在沖海兵隊約1万9千人のうち約4千人をグアム、約5千人をハワイなどに移転させることで合意している。
 ネラー氏は、グアム移転計画に現時点で変更はないとしてはいる。だが、北朝鮮のミサイル開発が急速に進む状況からして、在沖米軍の再編計画に影響を与える可能性がある。
 移転計画の後退は断じて容認できない。沖縄以外への移転方針を堅持し、米本土などに移転することを強く求める。
 北朝鮮がミサイル開発に力を入れる中、沖縄に米軍基地を集中させ続けることは大きなリスクを伴う。在沖海兵隊のグアムなどへの移転計画も、沖縄の負担軽減を図ることだけが目的ではない。リスク分散の狙いもある。
 北朝鮮がことし3月に弾道ミサイル4発を同時発射したのは、在日米軍基地攻撃の訓練だったと朝鮮中央通信は報じている。県民や米軍関係者の安全を考慮すれば、沖縄からの米軍撤退を真剣に検討する時期に来ている。手始めに海兵隊は全面撤退すべきだ。
 北朝鮮のミサイルは2016年2月、沖縄本島と先島上空を通過している。完全にミサイルの射程に入っている沖縄はグアムよりはるかに危険度が高いのである。
 北朝鮮の脅威を理由に、在沖海兵隊の移転計画を延期したり、撤回したりすることは沖縄のリスクを高めることにしかならない。米政府は、沖縄が射程にある事実を深く認識し対応すべきだ。閉鎖に反対する米本土の基地に移転するなど、選択肢はいくらでもある。
 計画見直しのもう一つの理由にも注目したい。グアムやテニアン島などへの移転に伴い、国家環境政策法(NEPA)に違反するとして反対運動が起き、訓練場を十分確保できる見通しが立っていないのだ。
 NEPAは、米政府が「著しい影響を人間環境に与える活動」を実行する前に、環境影響評価書作成と公表、代替案の検討、住民の手続き参加を義務付けている。日本の法律が及ばない在沖米軍基地にNEPAを厳格に適用するのは当然だ。県民生活に悪影響を及ぼす米軍の訓練は廃止すべきである。