<社説>安倍首相会見 「説明責任」有言実行を


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 最も反省すべきは疑惑解明に後ろ向きな姿勢だ。だが、深く反省するだけで済むことでもない。真相究明を国民に約束すべきだ。

 安倍晋三首相が通常国会閉会を受けて会見した。加計学園の獣医学部新設計画問題や、森友学園問題での国会答弁について「印象操作のような(野党の)議論に強い口調で反応した私の姿勢が、政策論争以外の話を盛り上げた。深く反省する」と述べた。
 首相は強い口調を反省したにすぎない。疑惑を解明せずに幕引きを図ったことは、反省していないのである。
 それどころか、首相の反省の弁には傲慢(ごうまん)さが透けて見える。野党の追及を「印象操作のような」としたことに、それが表れている。
 共同通信社の世論調査で、行政がゆがめられたことはないとする政府側説明に73・8%が「納得できない」としたことからも、野党の追及には正当性がある。野党の追及は国民の声と受け止めるべきものだ。その認識が首相には決定的に欠けている。
 そもそも印象操作したのは安倍政権の方である。「総理の意向」文書の存在を認めた前川喜平前文部科学事務次官の信用を失墜させようと躍起になったことは、印象操作にほかならない。
 首相は前川氏について「天下りの隠蔽(いんぺい)そのものに関わった。一番責任が重い」とし、問題をすり替えた。菅義偉官房長官は「売春や援助交際の温床になりかねないと指摘されている店に頻繁に通い、女性に小遣いを渡した」と前川氏を非難した。
 安倍政権は、疑惑から国民の目をそらすことに腐心したことを恥ずべきである。
 首相は会見で加計学園問題について「指摘があればその都度、真摯(しんし)に説明責任を果たしていく。国会の閉会、開会にかかわらず、分かりやすく丁寧に説明していきたい」と述べた。
 有言実行を求める。萩生田光一官房副長官が2016年10月、首相の考えを基に18年4月開学を文科省に迫ったとする文書の存在が新たに判明した。民進など野党4党が要求する閉会中審査に応じるべきだ。これ以上、疑惑を放置することは許されない。
 首相は「規制改革は行政をゆがめるのではなく、ゆがんだ行政を正すもの」「岩盤規制の改革には抵抗勢力が必ず存在する」とも述べた。
 国民より米軍を優先する日米地位協定は一種の「岩盤規制」である。その改定要求を拒むことは「ゆがんだ行政」の最たるものだ。これを正すよう求める国民の声を放置する首相は抵抗勢力である。
 首相は「私が先頭に立ち、ドリルの刃(やいば)となって、あらゆる岩盤規制を打ち破っていく」と述べた。地位協定改定にも同様の決意を示すべきだ。改定は首相の言う「国民の生命、財産を守る」ことになる。治外法権解消こそ優先的に取り組むべきである。