沖縄経済展望/自立へ追い風生かせ 独自性と高付加価値が鍵


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 景気が後退局面入りする中、デフレから脱却し、低迷が続く日本経済の再生をどう図るか。安倍新政権が避けて通れない課題だ。
 幸先が良いことに、2013年の日本経済を占う明るい兆しもある。日銀に大胆な金融緩和を求める安倍政権への期待感から、12年の最後の取引となる大納会で、日経平均株価の終値が13年ぶりにその年の最高値を更新した。

 素直に歓迎したい。ただ実体経済に何ら変化はないことにも留意する必要はあろう。新政権の経済政策への期待が失望に変わることがないよう、安倍晋三首相には、経済成長と財政再建の両立に向けた具体的なかじ取りを求めたい。

◆下支えする人口増

 依然厳しい国内経済に比べ、沖縄経済は、堅調な個人消費や観光を中心に回復基調が続いている。 県内専門家らの予測によると、13年は引き続き消費や観光がけん引するほか、一括交付金を活用した公共事業への期待感もあり、リーマン・ショック前の水準に戻る見通しだ。
 琉球新報は08年から県内景気予想を100点満点で採点してもらっているが、13年は前年比8ポイント増の64点と08年の78点以来の高得点となった。回復から成長へと確かな飛躍を実感できる年としたい。
 日本が少子高齢化社会に直面する中、沖縄は、人口増加率が全国一と経済成長を下支えする基礎的条件を反映していることも見逃せない。人口や世帯数の増加は消費を促し、住宅など建設需要も着実に刺激するからだ。
 本紙元日号で紹介されたトップインタビューからも、その点がうかがえる。人口増や若年層の多さなどを挙げ、「非常に魅力的な地域」(平田一馬ドン・キホーテ九州支社長)と沖縄進出の理由とするほか、「他県に比べ安定的に推移する」(黒土始・第一交通産業グループ会長)などと県経済を展望している。心強い限りだ。
 そうした意味で、県が13年度に策定する「沖縄県人口増加計画」(本紙元日号1面)は、将来を見据えた意義ある取り組みと言えるだろう。
 12年後の25年にピークと試算される県人口が減少に転じることを防ぎ、逆に増加を続けることで県の活力とする狙いだ。子育て支援やUターンなどの転入奨励、離島や過疎地域の人口流出防止など幅広い分野で網羅的に諸施策を講じることで、現在140万人の人口を150万人台に乗せる方向だ。
 10年後、20年後の沖縄経済を展望する上でも、人口の増加は活力をみるバロメーターとなる。実効性のある計画を練り上げたい。

◆ベンチャーの気概で

 もちろん人口増だけを頼みの綱とするだけでは、県経済の発展など到底おぼつかない。要は、沖縄の地理的優位性を生かし、成長著しいアジアの活力をいかに取り込むかだ。そのためにも沖縄の独自性を追求し付加価値を高めることを成長戦略として掲げたい。
 追い風もある。全日本空輸が那覇空港を拠点(ハブ)に国内とアジアの主要都市を結ぶ国際航空貨物事業だ。国内の物流改革を実践してきたヤマトホールディングスが12年11月に参入し、今後の取扱貨物量の大幅増が期待される。
 そこに県産品をどう絡めていけるか。物流ハブに付随する生産、加工、組み立て、商品検査などの新ビジネス創出に向け、県内企業の主体的な関わりを求めたい。
 亜熱帯気候を生かした独自性の高い商品開発で期待されるのが、農林水産業の従事者が、加工や流通、販売までを手掛ける6次産業化の動きだ。離島など過疎地域対策の切り札ともなり、官民挙げて推進する必要があろう。
 観光や情報産業などさまざまな分野で言えることだが、経済自立への鍵は、物まねではない“沖縄ブランド”をいかに構築するかに尽きるだろう。県内全ての企業が新たな価値を創造するベンチャーの気概を忘れることなく、果敢な挑戦を続けてもらいたい。