米政府閉鎖 国民不在の対立解消せよ


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 上下両院で多数派が異なる米議会の機能不全は目を覆うばかりだ。国民不在の政治対立に一刻も早く終止符を打たなければならない。

 米連邦予算をめぐる民主、共和両党の対立により、約18年ぶりに政府機関の一部が業務停止に追い込まれた。国立公園や税務署など無給で休職を強いられる連邦政府職員は80万人以上とされるが、事態収拾のめどは立っておらず、長期化する懸念も強い。
 米メディアによると、一部閉鎖による経済損失は、1日当たり3億ドル(約295億円)に上るとの試算もある。対立が長期化する影響は米国内にとどまらない。
 連邦債務上限の引き上げ期限が今月17日に迫る中、引き上げ交渉に合意できなければ、米国債が債務不履行(デフォルト)となり、世界経済に深刻な打撃を与える恐れがあるからだ。
 2008年に米国発のリーマン・ショックが世界経済危機に発展したことは記憶に新しい。デフォルトで国際指標とされる米国債の利払いが滞れば、世界各国の株式や債券相場が急落する「最悪のシナリオ」も指摘される。オバマ大統領と米議会は、世界最大の経済大国として、国際社会をみすみす混乱に陥れる愚を回避する責務があると自覚すべきだ。
 与野党対立の直接の原因は、オバマ政権が目玉政策として進める医療保険制度改革(オバマケア)の取り扱いだが、根本的な要因は、10年秋の中間選挙以降に生じた「ねじれ」議会にある。
 政権野党の共和党が多数を占める下院は先月末、オバマケアの実施延期などを盛り込んだ暫定予算案を可決したが、民主党優位の上院は否決。両院の可決が必要な予算は成立しなかった。
 強硬路線を主導する共和党保守派は、暫定予算を「人質」に取ったが、オバマ政権は「一切譲歩しない」と宣言し、対話を拒否した。両党には1年余り先の中間選挙をにらみ、対立軸を鮮明にしたいとの思惑も透けて見える。
 しかしながら、国民の支持を得るための戦略が、国民にしわ寄せが行くのは、本末転倒というほかない。CNNテレビによると、米議会への支持率は10%と歴史的な低さを示した。両党はやせ我慢にも似た不毛な対立をいいかげん解消し、危機回避の道を探るべく互いに歩み寄るべきだ。