<社説>COP12 辺野古中止を発表せよ


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 生物種や生態系の豊かさを示す生物多様性の劣化が深刻だ。

 国連環境計画などの国際チームが、生物を取り巻く地球環境は依然として厳しく、2020年には、生物種や生態系の多様性が現在よりも悪化している恐れが高いとの予測を米科学誌サイエンス電子版に発表した。
 日本は10年の生物多様性条約締約国会議(COP10)の議長国として、20年までの絶滅危惧種の保全状況改善に関する国際目標(「愛知ターゲット」)をまとめた。議長国の責任を果たすため、目標達成に先導的な役割を担うべきだ。
 国連環境計画がサイエンスに発表した推定は、経済活動に伴う環境破壊の大きさと比べ、保全活動の資金確保や汚染物質の除去、乱獲の規制といった対策は不十分で、20年には生物多様性の劣化がより深刻になると結論付けた。
 内閣府による「環境問題に関する世論調査」(14年)によると、「生物多様性」という言葉を「聞いたこともない」とした回答が52・4%に上った。前回調査(12年)から11・0ポイント増え、認知度が低下している。
 野生生物を絶滅の危機度に応じて分類した「レッドリスト」について初めて聞いたところ、「知らなかった」が52・8%だった。
 日本国民の認知度低下に加え、沖縄では国家によって生物多様性が破壊されようとしている。
 世界自然保護基金ジャパンは、米軍普天間飛行場の移設先の名護市辺野古・大浦湾海域について、30種類以上の新種の甲殻類が見つかり、絶滅の恐れが極めて高いジュゴンが生息しているとし、世界的に重要な生物多様性の地域と位置付けている。
 しかし日本政府は本来、海洋保護区とされるべきこの海域を埋め立てようとしている。一連の準備作業でジュゴンが藻場に近寄れなくなっている可能性があるという。
 日本自然保護協会は先月、ケネディ駐日米大使に対し、辺野古に設定された臨時制限区域内でのジュゴン食(は)み跡調査が実施できるよう求める手紙を出した。当然過ぎる要求だ。
 6日から韓国の平昌(ピョンチャン)で、COP12が始まる。「愛知ターゲット」の達成状況が主要議題となる。各国に保全対策の加速が促されるだろう。日本は辺野古の工事中止を発表し、COP10議長国としての責任を果たすべきだ。