<南風>島々の飛躍を願って


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「『島あっちぃ』が離島に福を運んでくれた!」。渡嘉敷島の金城肇さんのメッセージが届いた瞬間、皆から歓声があがりました。沖縄の離島へ3千人の本島在住県民を送り、モニターツアーを実施する沖縄離島観光・交流促進事業の報告イベント「島あっちぃコンサート」終了直後でした。

 この事業は、県地域離島課が主管し、離島の活性化を目的に一括交付金を活用して行うもので、初年度は光文堂コミュニケーションズ、カルティベイト、東武トップツアーズの共同企業体が委託を受けました。

 バスやタクシー、病院、高校、コンビニなど、ないないづくしが小さな離島です。そこが初めて大人のツアーを受け入れ、民泊や民宿泊で体験や交流プログラムを実施したのです。しかも100のプログラムを島のみなさまがつくり、添乗員がいないツアーを受け入れるという大きなチャレンジをしてもらいました。

 スタート3カ月は試行錯誤の連続でした。県民のみなさまからは「情報が来ない」「対応が遅い」などのクレームをもらい、島々からは「マナーが悪い人を外して」と泣きつかれ、平均値とはいえ33%を超えるキャンセルに悩まされ、胃の痛む日々でした。しかし、マスコミ、企業、教育機関、友人知人の協力を得て、モニター2759人、未就学児童を加えると2894人に19離島20地域へ訪れていただくことができました。

 涙の別れが起こるようになった島では、8割助成で参加したモニターが全額自費で再訪することが始まったようです。島々に自立の芽が育ってきました。

 次なる課題は「安心安全」と「島らしさを残す」受け入れ態勢の強化です。以前、西表ではルールがないままにカヌーブームが起き親子の命が失われました。今こそ大切な時だと肝に銘じます。島々の飛躍を願いつつ。
(開(比嘉)梨香、カルティベイト社長 沖縄海邦銀行社外取締役 元沖縄県教育委員長)