固有種「消えてしまう」 沖縄・高江 生息地破壊に危機感


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
沖縄固有亜種のオキナワカブトムシに触れる子どもたち=23日、東村高江の新川川

 「この森にしかいない生き物たちがいる。その貴重な生き物たちを殺すんですか」。ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の工事車両が搬入される前日の21日夜、N1地区ゲート前を訪れていたチョウ類研究者の宮城秋乃さん(37)は警備の機動隊員に詰め寄った。機動隊員は「僕が殺すわけじゃない」と答えた。「ヘリパッドができたらこの生き物たちは消えてしまうんですよ」。宮城さんが訴えると、機動隊員は何も話さなくなった。

 宮城さんはやんばるに希少種のチョウが多く生息していることに着目し、2011年から東村高江の森で生物観察と調査を続けてきた。「やんばるに生息する動物は5千種類以上、高等植物は千種類を超える。ヘリパッドが造られることで、ここに住んでいた生き物が住めなくなることは容易に予想できる」

 亜熱帯地域の照葉樹林が広がり多くの生き物が生息するやんばる地域。やんばる固有種のナミエガエルやノグチゲラ、ヤンバルテナガコガネなど、もともと数が少なく絶滅の危機にある動植物が生息している。

 14年に完成したN4地区のヘリパッドは、緑の木々が生える中にぽっかりと穴が空いたように見える。ヘリパッド建設のために木々を伐採したのだ。樹木で守られていたはずの土は芝生になった。「これでは生物の交流が困難になる」。宮城さんは眉をひそめる。

 ヘリパッド工事車両搬入の翌日、宮城さんは新たなヘリパッド建設予定地からわずか数キロの距離にある高江の新川川で昆虫観察会を開いた。木漏れ日が差し、透き通った新川川をイタジイなどの照葉樹が覆っていた。時折ノグチゲラが「キュッキュッ」と鳴いた。沖縄固有亜種のオキナワカブトムシ2匹が樹液を巡って格闘した。自然豊かな森の営みが繰り広げられていた。

 初めて新川川を訪れた那覇市の糸洲朝和さん(44)は「ヘリパッドはここじゃなくてもいいのではないか。(自然を失い)取り返しがつかなくなっては何も守れなくなる」と表情を曇らせた。

 国頭村、東村、大宜味村のやんばる3村にまたがる地域は近く国立公園に指定される予定だ。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界自然遺産登録を見据えている。だが、米軍施設は世界自然遺産推薦候補区域に含めることができない。「沖縄に残されている大自然に気付いていない人が多い。基地と自然が隣合わせにある異常さを、多くの人に考えてほしい」。宮城さんは切実に訴えた。(阪口彩子)