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『援護法で知る沖縄戦認識』 「沖縄戦の真実」取り戻す

『援護法で知る沖縄戦認識』石原昌家著 凱風社・2700円

 本書は戦後、本来軍人・軍属を対象とした「戦傷病者戦没者遺族等援護法」(援護法)が沖縄民間人被害者に適用され、靖国神社に合祀(ごうし)されたことによって「沖縄戦体験の真実」が塗り替えられてきた歴史をつづる。「援護法」を鍵に、「教科書検定事件」等の歴史認識論争、日本の再軍国化への動きとの関連も読み解く、沖縄戦とその記憶の本質に迫る比類なき書だ。

 40年にわたり沖縄戦体験者の聞き取りをしてきた著者がいう「沖縄戦体験の真実」とは、天皇制存続のための持久戦の中で、日本軍が住民を守らないだけではなく、軍事作戦上住民を殺害したり死に追い込んだりしたことだ。しかし日本政府は、5万人を超える沖縄民間人への援護法適用の過程で、戦争被害者を真逆の「戦闘参加者」と定義し直し、靖国神社と結託して、赤ん坊からお年寄りまでの民間人被害者を加害側の日本軍人と共に軍神として祀(まつ)った。壕から追い出されて死んだことを「壕の提供」とし、強制的に集団死に追いやられたことを、「集団自決」(「戦闘員の煩累(はんるい)を絶つため崇高な犠牲的精神により自らの命を絶つ」という意味)と定義したことで、日本軍による沖縄人の被害は、日本軍と共に闘った行為として書き換えられた。

 本書は、沖縄住民が戦後も皇民化教育の影響の残る中、生活の困窮を和らげた「援護」や「靖国合祀」を容認してきたことからタブー化されてきた「援護法に関する研究」に正面から取り組む。その中で2008年に遺族5名が起こした「沖縄靖国神社合祀取消裁判」は、「皇国史観を引きずる沖縄戦後史と対峙(たいじ)する」と同時に、「人間の尊厳を取り戻そうとする崇高な取り組み」と位置付ける。

 この裁判が十分な支持を得なかったことを「沖縄戦認識が共有されてこなかった」と振り返る著者は、裁判の史資料を次世代が生かし「『沖縄戦の真実』を住民の手に取り戻す」ことを訴えて筆を擱(お)いている。

 本書が一貫して問うのは「国家の戦争責任、日本軍の犯罪」であり、根本的には植民支配そのものである。日本人こそが心して読むべき一冊だと思う。
 (乗松聡子・「ジャパン・フォーカス」編集者)

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 いしはら・まさいえ 1941年生まれ、那覇市首里出身。大阪市立大大学院修士課程修了。沖縄国際大名誉教授。著書に「虐殺の島-皇軍と臣民の末路」「証言・沖縄戦-戦場の光景」など多数。

援護法で知る沖縄戦認識―捏造された「真実」と靖国神社合祀
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