カイコ活用、世界初ワクチン ジカ熱、日本脳炎対応 生物資源研


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 【名護】生物資源研究所(名護市)の根路銘国昭所長はカイコを使った世界で初めてとなる複数のワクチンを開発した。中南米や東南アジアで感染が発生しているジカ熱(ジカウイルス感染症)のワクチンと、約50年振りに中国、韓国で流行が確認された遺伝子5型(G5)ウイルスにも対応した日本脳炎の複合型ワクチンだ。ジカ熱は妊娠中の女性が感染すると、頭部が先天的に小さい小頭症の赤ちゃんが生まれたという報告例が多くあり、ワクチンの開発が急がれているが、現段階で20カ国以上で開発に取り組まれているものの実用化に至っていない。

 県の創薬研究事業から助成を受け開発した。カイコから作るワクチンは短期間で量産でき、別方法で生成するワクチンより低コストなのが特徴。根路銘氏は「貧しい地域の人々も接種できるよう、安価で良質なワクチンを大量に提供したい」と話した。

 ワクチンの開発は、16日、那覇市のホテルであったシンポジウム「21世紀のシルクロードは沖縄から」で発表された。

 ジカ熱は蚊を媒介して感染する感染症で60カ国以上の国や地域で感染が報告されている。根路銘氏はカイコが持つバキュロウイルスを利用。ジカウイルスの合成遺伝子で発現させて生成した組み替えバキュロウイルスをカイコに植えることで、ジカ熱の免疫を作るワクチンタンパク質が大量に生産された。

 日本脳炎については1940年代にアジアを中心にまん延したG1~G4型に対応するワクチン数種類が開発され使用されている。だが、数年前からそのワクチンで予防できないGV型の流行が確認されている。

 根路銘氏は2月、国立感染症研究所の専門家からの提案を受け、研究を開始。12月に世界で初めてGV型のワクチンの生成に成功した。さらにGV型と既存のG3型のワクチンを組み合わせ、現在確認される全ての型に対応できる可能性がある混合ワクチンを開発した。(宮城久緒)