JA、夏秋ギク本格化 生産、3倍の300万本計画


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 県内の花卉(かき)生産額で最も多いキク農家の所得向上を目指し、JAおきなわは今年から5~9月に収穫できる小ギク「夏秋ギク」の県内栽培を本格化させる。JAは夏秋ギクの生産量を昨年の3倍の300万本、1億円の生産を計画している。沖縄は従来、温暖な気候を生かし冬春期の需要を中心に栽培・出荷してきたが、出荷時期を夏場まで広げることで、キク産地としてのブランド力向上につなげる。

夏秋ギクの栽培に意欲を燃やす上地一樹さん(右)とJAおきなわ中部地区営農振興センターの伊波裕さん=11日、読谷村

 これまで県内では冬場の栽培に適した「秋ギク」を栽培してきた。だが栽培は4月末が限度で暖かくなる4月以降は品質的にも課題が指摘されるため、夏場の収穫に向けより暑さに強い夏秋ギクの栽培を決めた。

 全国的な小ギクの生産は5、6月が暖地産と高冷地産の切り替え時期に当たるが、近年は農家数の減少や天候不順が続いていることもあり、県外産の出荷量が不安定化していた。市場からは県産品の出荷時期拡大への要望が集まっていた。

 沖縄側にとってもこれまで主力だった冬春季のキク相場が輸入物の増加などで従来に比べ不安定化し、所得向上が課題だった。外国人技能実習生を通年雇用している農家も広がり、1年を通じた仕事と収入獲得の需要も高まっていた。

 JAは、花卉類では全国的にも珍しい農家への振込単価をあらかじめ設定して販売する「値決め販売」を導入し、農家の生産意欲を高める。

 一般農家は台風シーズン前の5~7月上旬の出荷を担う。鉄骨造りの強固なハウスが整備された読谷村の農場では、高値取引が期待される8月の盆需要に合わせて出荷し、より付加価値の高い栽培を目指す。

 夏秋ギクは秋ギクよりも日照量などに敏感で、高度な管理が求められる。より沖縄での栽培に適した品種の選定や栽培技術の向上も求められそうだ。

 4年前から読谷村でモデルケースとして夏秋ギク栽培に取り組んできた上地一樹さんは「暖かくなると虫の動きも活発化し大変なことも多いが、栽培のこつをつかんできた」と感触を語った。(知念征尚)