県教育委員会は19日、西原町の県立埋蔵文化財センターで、2012~16年度に調査を進めた石垣市の白保竿根田原洞穴(さおねたばる)遺跡の最終的な調査結果を発表し、同遺跡を国内初の旧石器時代の墓地と確認した。同遺跡からは少なくとも19体分の旧石器時代の人骨が確認されており、世界でも最大規模。同センターの金城亀信所長は「日本の人類学、考古学研究に新たな歴史を刻む重要な発見だ」と強調した。
出土した19体の中でも「4号人骨」は約2万7千年前(較正(こうせい)年代)のもので、港川人骨より5千年古い。頭骨を含めほぼ全身の骨格があり、葬られた時の姿勢も明らかになった。県教委は「遺体を地下に埋めず地上の狭い岩陰に安置する風葬に近い様式だったと考えられる」とした。
同遺跡を墓地と判断した背景については5カ所の洞窟から、それぞれ複数の人骨が見つかったことを挙げた。同センターの片桐千亜紀主任専門員は「死者を弔う場所と生活する場所が洞窟の外と中で分かれていた可能性が高い」と述べた。
遺跡を今後どう活用するかは白紙の状態だ。石垣市の中山義隆市長は「島にとって貴重な財産だ。観光資源としての可能性もあると思う」と語った。市教委文化財課の島袋綾野課長補佐は、空港敷地内にあり安全性確保に課題があるとした上で「価値のある遺跡なので、市民にも身近に感じてもらいたい」と話した。
「4号人骨」など頭骨がほぼ残っている4体の人骨は20日から28日まで同センターで一般公開する。入場無料。問い合わせは(電話)098(835)8752。
<用語>旧石器時代と較正(こうせい)年代
磨製石器を主な道具とした約1万6千年前以後の新石器時代は日本では縄文時代、沖縄では貝塚時代に当たる。それ以前が旧石器時代である。旧石器時代の年代測定は放射性炭素法で行われてきたが、近年、植物の年輪の検証などで補正した較正年代も併記されている。較正年代は放射性炭素法年代より数字が約4千年大きく、実年代に近い。