東日本大震災の記憶ともし続ける 宜野湾の居酒屋「±零」 月命日、店内にキャンドル


この記事を書いた人 Avatar photo 島袋 貞治
毎月11日、キャンドルをともして店を営業する知花昌範さん(右)と小野寺雄磨さん=沖縄県宜野湾市真志喜の居酒屋「±零」

 鎮魂の思い、キャンドルに託して―。東日本大震災の月命日に当たる毎月11日、キャンドルをともして営業している店が沖縄県宜野湾市にある。東北地方の食材や日本酒を提供する居酒屋「±零(リセット)」。店長の知花昌範(しょうはん)さん(33)=浦添市=は震災後、宮城県内で2年間働き、被災者の心に触れてきた。今月は11日までの3日間、キャンドルナイトを行う予定で、「あの日(2011年3月11日)を絶対に忘れない。沖縄と東北をつなぎたい」と話している。

 11年12月、県内で自動車販売をしていた知花さんは、ボランティアのため宮城県岩沼市を訪れた。海から1キロも離れていない沿岸部。家の中の泥を外に出し、土を掘った。「あの光景を見て、自分の中で何かが変わった。一生懸命生きないといけない、と思った」

 13年1月に退職し、調理師学校に入学した。14年の春から、仙台市の居酒屋「食楽道場壱歩」で働き始めた。休日はお客さんに連れられ、沿岸部を中心に宮城県内を歩いた。沖縄の知人が来ると、今度は知花さんが被災地を案内した。

 仙台で2年間働いた後、16年8月、宜野湾市に居酒屋「±零」をオープンさせた。県産若鶏を使った焼き鳥のほか、仙台みそで漬け込んだ牛タンや油揚げ、福島県の日本酒などを提供している。毎年1月は参加者を募って「仙台ツアー」を実施。被災地を訪れ、現地の人と交流を深めている。

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 「±零」を切り盛りするのは知花さんと、仙台市出身で震災時、仙台高専3年生だった小野寺雄磨さん(25)だ。「―壱歩」で同僚だった2人は、16年8月のオープン以来、毎月11日のキャンドルナイトを欠かしたことがない。

 知花さんは「震災で多くの人が亡くなった。被災者の願いは『(震災を)忘れないで』だと思う。大きなことはできないが、忘れずにいることは僕らにもできる。キャンドルを通して、お客さんにあの日を伝えられたらいい」と話す。

 小野寺さんの自宅は内陸部にあり、無事だった。それでも「津波のことは頭に無かった。沿岸部にいたら自分も巻き込まれていたかもしれない。津波の恐ろしさを忘れたら、同じことを繰り返す」と強調する。

 今月11日で震災から丸7年。±零は9、10、11日の3日間、キャンドルをともして営業し、宮城県産のコメやノリも販売する。知花さんは「沖縄と東北がつながってくれたらうれしい。僕らにできるのは、そのきっかけづくり。被災地に少しでも恩返しできれば」と話している。(真崎裕史)