〈解説〉辺野古承認撤回 県、不測の事態越え完遂


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、沖縄県が埋め立て承認を撤回したことで、国と県の対立は再び法廷に持ち込まれる。撤回方針を表明した翁長雄志知事の死去や、それに伴う土砂投入の先送りなど不測の事態もあったが、県は行政手続きとして撤回を完遂した。2015年の承認取り消しと並び、新基地建設阻止に向けた最大の権限行使だ。知事選をはじめとする選挙ラッシュや県民投票など新基地建設の行方を左右する出来事が続く見通しで、新基地建設問題は重大な岐路を迎える。

 15年に承認を取り消した際も約1年の裁判闘争があったが、最高裁判決で県が敗訴した。これまで岩礁破砕許可を巡る裁判などでも県は全て敗訴しており、法廷闘争の結果に悲観的な見方も強い。

 県が指摘している事項だけでは「裁判に勝てない」という立場から、撤回に慎重な声も県庁内部であった。そんな中、政府が早ければ8月17日にも辺野古海域に土砂を投入するとしていた状況を受け、翁長知事は7月末「全て私の責任で」と撤回手続きに入ることを決断した。

 8月8日の翁長知事の急逝で突然政治リーダーが不在になり、撤回判断のバトンは両副知事に委ねられた。知事選が9月30日に前倒しとなるなど政治状況の変化で、政府は土砂投入と撤回の両方を延期する「休戦協定」(政府関係者)を持ち掛けた。だが県はそれに応じず「毅然(きぜん)と」(謝花喜一郎副知事)手続きを進め、31日、撤回処分を実行した。謝花副知事は撤回後の会見で「今回の承認取り消しは適法になされたと考えている」と強調した。

 9月上旬から、知事選のみならず、名護市議選を含む統一地方選や宜野湾市長選など重要な選挙が続く。新たな知事は“撤回後”を引き継ぐことになり、9月30日投開票の知事選で大きな争点の一つとなりそうだ。新県政の誕生後、県民投票も実施される見通しだ。県の撤回がこの日程の前に実行されたことが今後、どのような影響を与えるか、注目される。 (明真南斗)