県民投票 高まる県民の不満 瀬戸際で妥協案急浮上


この記事を書いた人 大森 茂夫

 新里米吉県議会議長は県民投票の全県実施に向け、全会一致による県民投票条例の改正について与野党調整に入ることを表明した。有権者の3割が投票できなくなる事態が想定される中で、投票事務を拒む5市長への批判とともに、事態打開に向けた動きのない県議会にも県内世論の不満は高まっていた。特に「辺野古」県民投票の会の元山仁士郎代表が宜野湾市役所前でハンガーストライキを始めてからは、全県実施を求める支持者からの突き上げは一層強まり、公明党県本が与党側に歩み寄りを働き掛けるなど政治的解決を探る動きが急転直下で浮上した。

移設工事の埋め立て土砂投入が進むキャンプ・シュワブ沿岸部=18日(小型無人機で撮影)

 17日、公明党県本幹部が新里議長と接触し、県民投票の選択肢を「容認」「反対」「やむを得ない」の3択とする妥協案を示し、与野党間の再調整に乗り出すよう要請した。不参加5市の首長が求めている選択肢の見直しと県議会の全会一致について、自民とも橋渡しができる立場の公明会派として、県政与党側にも譲歩を求めた格好だ。

■水面下の動き

 県議会の公明会派は県民投票条例が可決された昨年の11月定例会で、賛否のほかに「やむを得ない」「どちらとも言えない」を加えた4択とする修正案を自民党と共に提出した。この修正案は賛成少数で否決されたため、賛否2択の条例案には反対し、これまで静観する姿勢を保っていた。

 当初は否定的だった3択について、公明幹部は「検討の余地がある」と譲歩の姿勢を見せた。

 公明が調整の動きを見せることについて、自民党県連関係者は「いまさら4択を提案されても応じたくないのが本音だが、公明が動けば『3択』でも乗らざるを得ない」と友党の働き掛けは配慮せざるを得ないとの考えを示した。

 自民党県連は19日の参院選候補者選考委員会後に、県民投票への対応を急きょ話し合った。会議後、照屋守之会長は「県民投票は全県実施しなければならないからこそ、県議会で4択を提案した」と述べ、条例改正に向けた話し合いが持ちかけられた場合の対応については「これから協議したい」と含みを持たせた。

■3択への波紋

 だが、野党の公明が打診してきた3択案に対し、県政与党には反発も強い。与党県議は「賛成か反対かをはっきりさせるために署名集めもやってきた。3択になると、何のための県民投票かというところから議論をし直さないといけない」と、現状での条例改正を疑問視する。

 県民投票は2月14日の告示が近づく中で、36市町村では投票所入場券の印刷発注など実施準備に入っている。17~19日の伊是名・伊平屋島の行政視察で県庁を離れていた玉城デニー知事は、同行記者に条例改正による全市町村実施の可能性を問われると「現実的に時間という問題もある」と慎重な回答ぶりだった。

 一方で、不参加を表明する5市に対し、県は地方自治法に基づく「是正の要求」を15日にも行うと見られていたが18日まで実施していない。与党幹部は「是正の要求を見送ったのは、5市参加の余地があると県が見ていることを意味するのでは」と指摘した。

 与野党合意のタイムリミットを25日とした新里議長は「県に問い合わせると議会は29日までに開かないと間に合わない。逆算して動くと25日以前に話は済んでいないとできない。ものすごく日にちが切羽詰まっている」と説明。政治への信頼を懸けて、全市町村参加に望みをつないだ最後の調整が始まる。(与那嶺松一郎、吉田健一)