原発事故と沖縄 労働環境改善に努めよ


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 こんなことがまかり通っていいのか。東日本大震災の原発事故の収束と除染作業に従事する県出身者の実態について、琉球新報は17日から連載「原発事故とウチナーンチュ」で紹介している。

 ある人は就業地が偽られ、原発作業であることを隠されたまま現地に派遣された。日当が一方的に下げられ、突然解雇された人もいる。証言で明らかにされる事実に驚愕(きょうがく)するほかない。復興事業の陰で「使い捨て」「モノ扱い」にされている県出身者が多く存在していることに強い憤りを感じざるを得ない。
 ある男性は「埼玉県で水槽を組み立てる」との求人を見て面接を申し込むと、健康診断書の持参を求められた。出発前日に「埼玉から福島に変わるかもしれない」と言われ、会社に着くと原発敷地内での作業だと初めて知らされた。求人内容は偽りだらけで、だまそうとしていたとしか思えない。
 職業安定法の第65条には虚偽の求人広告や虚偽の条件提示で募集をした場合、6月以下の懲役か30万円以下の罰金に処されるとある。同法違反に該当するのは明らかであろう。会社は処罰すべきで、野放しにしたままでは第二、第三の被害者が出てしまう。
 この男性は作業期間中の被ばく量を把握していない。放射線管理手帳を見せられていないからだ。手帳は退職した場合、本人に返却することが義務付けられている。しかし退職から1年3カ月たっても、会社から手帳は返却されていない。人命軽視も甚だしい。
 福島県内で除染作業に従事した別の男性は現地で日当が1万円から9千円に下げられた。現地のハローワークで確認すると、同じ仕事の求人が1万4千円で出ており、相場より低く抑えられて雇用されていた。別の男性は航空代金は現地の会社が支給すると言われたが、支払いを拒否されている。
 福島県から遠く離れた沖縄の労働者は現地の事情に詳しくない。渡航費を捻出して来ているので条件が違っても帰るに帰れないという事情もある。こうした点につけ込まれ、労働力が買いたたかれているのは問題だ。除染作業には2011~13年度までに1兆2千億円という巨額の公費が投じられる。その費用が適正に使われず、労働者が不利益を被っている現状は是正する必要がある。関係機関は実態を把握し、労働環境を改善すべきだ。